12:00 〜 14:00
[R2P-06] 微細組織と包有物から探る多結晶ダイヤモンド,カーボナードの起源
「発表賞エントリー」
キーワード:カーボナード、マイクロクリン、ダイヤモンド、TEM
<はじめに>
カーボナードは多結晶ダイヤモンドの一つで、灰色から黒色を呈し、多孔質かつ塊状で不規則な形態を示す。通常のマントル起源のダイヤモンドと異なり、炭素同位体組成が極めて低い(-25~30 ‰)(Haggerty, 2014) 、産出地がブラジルと中央アフリカ共和国の漂砂鉱床に限定されている、形成年代が極めて限定的である(2.6~ 3.5Ga) (Sano et al., 2002)など、特異な特徴を多く有しており、カーボナードの起源と成因については未だよく分かっていない。本研究では、カルボナドの起源と形成環境の手がかりを見つけるために、ブラジル産と中央アフリカ共和国産カーボナードの微細組織と初生包有物に特に着目し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたナノーミクロスケールでの記載・分析を行った。
<試料と分析方法>
本研究には、アフリカ産(4つ)とブラジル産(3つ)の試料を用い、FE-SEM(JEOL,JSM-7001F)とTEM(JEOL, JEM-2100F)で観察を行った。試料には内部の組織・包有物を観察するための基礎加工として、厚さ数ミリになるようレーザーで割断した後、JEOLクロスセクションポリッシャを使用したArイオンミリング法と機械研磨法による仕上げを観察面に施し、試料帯電防止のため5nm厚のオスミウム蒸着を行った。さらに、TEMによる観察をする際には、FIB(Thermo Fisher Sci., SiosおよびScios2)を使用して試料から厚さ100nm以下の薄膜を作製した。
<結果と考察>
SEMによる断面観察の結果、カーボナードは径2~50μmの不定形のダイヤモンド粒子で構成され,それらの粒界のほとんどは直線的ではなくジグザグ状で、径1μm程度の空隙が普遍的に観察された.それらの空隙の壁面を詳しく観察すると,幾何学的な関係から{111}や{100}に相当するファセットとして解釈することができ,空隙が(半)負晶状の産状を示すことから流体で満たされていてた可能性が高いといえる.これらの空隙を伴う粒界を跨ぐようにFIBで薄膜を切り出しTEMで観察したところ、そのような空隙の内部に析出相が含まれ,また1μm以下の微細な空隙(負晶)がダイヤモンド粒子の内部にも含まれ,同様の析出相が含まれることがわかった。析出相のほとんどは数百nm以下で、STEM-EDSによる組成分析からSiO2,K-Alケイ酸塩、Caリン酸塩、Fe酸化物であることが確認できた。制限視野電子線回折によりK-Alケイ酸塩は、Microclineの逆格子パターンで最もよく説明され、SiO2相はたいていの場合非晶質であった。これらのダイヤモンド粒内や粒界に含まれる負晶は、ダイヤモンドの結晶成長中に捕捉された初生包有物と考えられ、カーボナードが流体に飽和した系で形成されたことを示唆するものである。負晶の内部に観察された複数の析出物は、捕獲流体から析出した娘結晶であると考えられる。析出物としてSiO2やMicroclineが含まれるということは、カーボナードがマントルの比較的浅い部分で花崗岩質の地殻物質やC-H-O流体の相互作用の結果、形成されたことを示しているのかもしれない。
カーボナードは多結晶ダイヤモンドの一つで、灰色から黒色を呈し、多孔質かつ塊状で不規則な形態を示す。通常のマントル起源のダイヤモンドと異なり、炭素同位体組成が極めて低い(-25~30 ‰)(Haggerty, 2014) 、産出地がブラジルと中央アフリカ共和国の漂砂鉱床に限定されている、形成年代が極めて限定的である(2.6~ 3.5Ga) (Sano et al., 2002)など、特異な特徴を多く有しており、カーボナードの起源と成因については未だよく分かっていない。本研究では、カルボナドの起源と形成環境の手がかりを見つけるために、ブラジル産と中央アフリカ共和国産カーボナードの微細組織と初生包有物に特に着目し、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたナノーミクロスケールでの記載・分析を行った。
<試料と分析方法>
本研究には、アフリカ産(4つ)とブラジル産(3つ)の試料を用い、FE-SEM(JEOL,JSM-7001F)とTEM(JEOL, JEM-2100F)で観察を行った。試料には内部の組織・包有物を観察するための基礎加工として、厚さ数ミリになるようレーザーで割断した後、JEOLクロスセクションポリッシャを使用したArイオンミリング法と機械研磨法による仕上げを観察面に施し、試料帯電防止のため5nm厚のオスミウム蒸着を行った。さらに、TEMによる観察をする際には、FIB(Thermo Fisher Sci., SiosおよびScios2)を使用して試料から厚さ100nm以下の薄膜を作製した。
<結果と考察>
SEMによる断面観察の結果、カーボナードは径2~50μmの不定形のダイヤモンド粒子で構成され,それらの粒界のほとんどは直線的ではなくジグザグ状で、径1μm程度の空隙が普遍的に観察された.それらの空隙の壁面を詳しく観察すると,幾何学的な関係から{111}や{100}に相当するファセットとして解釈することができ,空隙が(半)負晶状の産状を示すことから流体で満たされていてた可能性が高いといえる.これらの空隙を伴う粒界を跨ぐようにFIBで薄膜を切り出しTEMで観察したところ、そのような空隙の内部に析出相が含まれ,また1μm以下の微細な空隙(負晶)がダイヤモンド粒子の内部にも含まれ,同様の析出相が含まれることがわかった。析出相のほとんどは数百nm以下で、STEM-EDSによる組成分析からSiO2,K-Alケイ酸塩、Caリン酸塩、Fe酸化物であることが確認できた。制限視野電子線回折によりK-Alケイ酸塩は、Microclineの逆格子パターンで最もよく説明され、SiO2相はたいていの場合非晶質であった。これらのダイヤモンド粒内や粒界に含まれる負晶は、ダイヤモンドの結晶成長中に捕捉された初生包有物と考えられ、カーボナードが流体に飽和した系で形成されたことを示唆するものである。負晶の内部に観察された複数の析出物は、捕獲流体から析出した娘結晶であると考えられる。析出物としてSiO2やMicroclineが含まれるということは、カーボナードがマントルの比較的浅い部分で花崗岩質の地殻物質やC-H-O流体の相互作用の結果、形成されたことを示しているのかもしれない。