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[R3-06] マントル遷移層から下部マントル最上部における MgO-SiO2-H2O 系の溶融関係について
キーワード:MgO-SiO2-H2O 系、溶融関係、マントル遷移層、下部マントル、含水マグマ
1. はじめに
近年の地震学的観測から、660 km 地震波速度不連続⾯直下に低地震波速度領域の存在が明らかにされており(Schmandt et al., 2014)、下部マントル最上部付近でのマグマの⽣成の可能性が指摘されている。 これまでの研究から、⽔は⽣成されるマグマの組成を⼤きく変化させることが明らかにされている。
含⽔条件下では、Mg2SiO4 olivine は約 8 GPa 以上で不⼀致融解し Mg/Si>2 の MgO に富んだ⽅向のマグマが⽣成され (Inoue, 1994) 、さらにマントル遷移層条件下(約 15 GPa)になると MgSiO3 clinoenstatite でさえも不⼀致融解し MgO に富んだ⽅向のマグマを⽣成し、SiO2 stishovite を晶出することが明らかにされている (Yamada et al., 2004) 。
無⽔条件下では MgSiO3 clinoenstatite は⼀致融解するため、含⽔条件と無⽔条件で⽣成されるマグマの組成は著しく異なる。では、15 GPa から 25 GPa の下部マントル最上部付近で⽣成させる含⽔マグマの組成はどうであろうか。加えて、マグマ中の含⽔量はどの程度であろうか。
これらの疑問を解決するべくマントル遷移層から下部マントル最上部条件下で、MgSiO3 - H2O 系で⾼温⾼圧実験を⾏った。そして、その結果からMgO-SiO2-H2O系の溶融相平衡図を作成し、考察を⾏った。特にマグマ中の含⽔量の算出については、今までの推定よりも定量的に決定できるように各種考察を⾏った。
2. 実験方法
⾼温⾼圧実験には川井型 600 ton(広島⼤学設置)及び 3000 ton(愛媛⼤学設置)⾼圧発⽣装置を使⽤した。マントル遷移層から下部マントル最上部条件を再現するため圧⼒は約 15.5 GPa と 25 GPa に固定し、温度は 1200 から 1800℃の範囲で実験を⾏った。出発物質には、マントルの主要構成鉱物 MgSiO3に⽔を加えた含⽔量 8.2 wt%と 15.2 wt%の 2 種類を⽤意した。マグマおよび共存する固相の化学組成(ただし、H2Oを除く)は EPMA を⽤いて明らかにした。そしてその化学組成からマスバランス計算により固相及びマグマ(液相)の構成⽐、すなわち溶融度を求めた。この結果を⽤いてマグマ中の含⽔量を計算した。
3. 結果及び考察
図1に本研究から明らかとなったMgSiO3-H2O系で生じる含水マグマの15.5 GPa と 25 GPaでの共融線を示す。高圧含水条件下ではMgSiO3 bridgmaniteは、stishoviteとliquidに不一致融解を起こし、無水条件下での融解関係とは大きく異なることが理解できる。
Inoue (1994) 及び Yamada et al. (2004) より約8 GPa以上の圧力条件ではMgOに富んだマグマが生成され、この傾向は15 GPaまで続くと報告された。本研究から共融線は更にMgOに富む方向へとシフトすることが25 GPaまでで示され、このMgOに富む傾向はさらに高圧下まで続くことが確認できた。
参考文献
[1] B. Schmandt et al.: Science, 344, 1265-1268 (2014)
[2] T. Inoue: Physics of the Earth and Planetary Interiors, 85, 237-263 (1994)
[3] A. Yamada et al.: Physics of the Earth and Planetary Interiors, 147, 45-56 (2004)
近年の地震学的観測から、660 km 地震波速度不連続⾯直下に低地震波速度領域の存在が明らかにされており(Schmandt et al., 2014)、下部マントル最上部付近でのマグマの⽣成の可能性が指摘されている。 これまでの研究から、⽔は⽣成されるマグマの組成を⼤きく変化させることが明らかにされている。
含⽔条件下では、Mg2SiO4 olivine は約 8 GPa 以上で不⼀致融解し Mg/Si>2 の MgO に富んだ⽅向のマグマが⽣成され (Inoue, 1994) 、さらにマントル遷移層条件下(約 15 GPa)になると MgSiO3 clinoenstatite でさえも不⼀致融解し MgO に富んだ⽅向のマグマを⽣成し、SiO2 stishovite を晶出することが明らかにされている (Yamada et al., 2004) 。
無⽔条件下では MgSiO3 clinoenstatite は⼀致融解するため、含⽔条件と無⽔条件で⽣成されるマグマの組成は著しく異なる。では、15 GPa から 25 GPa の下部マントル最上部付近で⽣成させる含⽔マグマの組成はどうであろうか。加えて、マグマ中の含⽔量はどの程度であろうか。
これらの疑問を解決するべくマントル遷移層から下部マントル最上部条件下で、MgSiO3 - H2O 系で⾼温⾼圧実験を⾏った。そして、その結果からMgO-SiO2-H2O系の溶融相平衡図を作成し、考察を⾏った。特にマグマ中の含⽔量の算出については、今までの推定よりも定量的に決定できるように各種考察を⾏った。
2. 実験方法
⾼温⾼圧実験には川井型 600 ton(広島⼤学設置)及び 3000 ton(愛媛⼤学設置)⾼圧発⽣装置を使⽤した。マントル遷移層から下部マントル最上部条件を再現するため圧⼒は約 15.5 GPa と 25 GPa に固定し、温度は 1200 から 1800℃の範囲で実験を⾏った。出発物質には、マントルの主要構成鉱物 MgSiO3に⽔を加えた含⽔量 8.2 wt%と 15.2 wt%の 2 種類を⽤意した。マグマおよび共存する固相の化学組成(ただし、H2Oを除く)は EPMA を⽤いて明らかにした。そしてその化学組成からマスバランス計算により固相及びマグマ(液相)の構成⽐、すなわち溶融度を求めた。この結果を⽤いてマグマ中の含⽔量を計算した。
3. 結果及び考察
図1に本研究から明らかとなったMgSiO3-H2O系で生じる含水マグマの15.5 GPa と 25 GPaでの共融線を示す。高圧含水条件下ではMgSiO3 bridgmaniteは、stishoviteとliquidに不一致融解を起こし、無水条件下での融解関係とは大きく異なることが理解できる。
Inoue (1994) 及び Yamada et al. (2004) より約8 GPa以上の圧力条件ではMgOに富んだマグマが生成され、この傾向は15 GPaまで続くと報告された。本研究から共融線は更にMgOに富む方向へとシフトすることが25 GPaまでで示され、このMgOに富む傾向はさらに高圧下まで続くことが確認できた。
参考文献
[1] B. Schmandt et al.: Science, 344, 1265-1268 (2014)
[2] T. Inoue: Physics of the Earth and Planetary Interiors, 85, 237-263 (1994)
[3] A. Yamada et al.: Physics of the Earth and Planetary Interiors, 147, 45-56 (2004)