一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

口頭講演

R3:高圧科学・地球深部

2023年9月16日(土) 14:00 〜 15:00 822 (杉本キャンパス)

座長:川添 貴章(広島大学)、境 毅(愛媛大学)、西 真之(大阪大学)

14:00 〜 14:15

[R3-12] 高温における酸素に富む火星核の形成過程

*大谷 栄治1、マクドノア ウイリアム1,2 (1. 東北大学、2. メリーランド大学)

キーワード:火星核、酸素、液相不混和

火星探査機インサイトによる観測によって,火星の核がこれまでの予想に比べて大きいことが明らかになり,火星の核は,これまで推定していたよりも軽元素を多く含むことが明らかになった,軽元素の有力な候補として,硫黄が提案されこれが主流の考え方になっている.しかし,コンドライト隕石の硫黄量から推定される火星核の硫黄量は少なく,硫黄以外の元素が火星核の主要な軽元素になっている可能性がある. SNC隕石のW-Hf同位体から推定される火星の核の形成時期は~5Ma程度と早く,26Alなどの消滅核種の存在から,火星の核は非常に高温で形成されたことが示唆される.金属鉄とケイ酸塩の間の硫黄と酸素の元素分配の実験によると,火星マントルのリキダス温度に比べて400-600K高温では,核中に多量の酸素が固溶する.したがって,火星の核が太陽系初期の高温時に分離したとすると,火星核の主要元素は硫黄ではなく酸素であると可能性が高い.鉄―酸素―硫黄系では,高温高圧で液相不混和状態が存在する.火星核の冷却にしたがって,火星核は均質な液体核から,酸素の多い液体核と金属鉄を内核として分離した可能性ある.液相不混和にともなう火星核の液体組成の変化が,初期に存在しその後消失した火星ダイナモの変化を説明できる可能性がある.