一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

ポスター

R3:高圧科学・地球深部

2023年9月16日(土) 12:00 〜 14:00 83G,H,J (杉本キャンパス)

12:00 〜 14:00

[R3P-05] 回転式DACを用いた下部マントル圧力下大歪変形実験より検討するWüstite多結晶体の変形特性

「発表賞エントリー」

*夏井 文凜1、東 真太郎1、岡﨑 啓史2、上杉 健太朗3、安武 正展3、河口 沙織3、野村 龍一4、太田 健二1 (1. 東工大、2. 広大、3. JASRI、4. 京大)

キーワード:レオロジー、変形実験、下部マントル、ウスタイト

地震波観測より、アフリカと南太平洋地下の下部マントル中部から最下部マントルにかけてS波速度が遅い領域(LLSVP:Large Low Shear Velocity Provinces)が存在することが確認されている[Lekic et al., 2012]。さらにその縁部では地震波速度が地震波の進む方向によって異なる地震波異方性が報告されている。地震波異方性は鉱物の結晶軸が特定の方向に並ぶ結晶方位選択配向(CPO : Crystallographic preferred orientation)の発達によって生じている可能性があり、その領域における構成鉱物の変形とCPO発達の関係を調べることで重要な知見が得られる。しかし、下部マントル圧力条件での変形実験の困難さにより実験的アプローチからその関係を議論した研究は少ない。LLSVPが熱的特徴なのか組成的特徴なのかは現在時点で未だ不明であるが、マントル対流による撹拌に耐えるためには、周辺マントルに対して約10%高い密度の組成である必要があり、鉄に富むフェロペリクレースとブリッジマナイトが構成鉱物の候補として考えられている[McNamara, 2019]。本研究ではフェロペリクレースの端成分であるWüstite多結晶体について下部マントル圧力条件での大歪変形実験を行い、変形に伴うCPOの発達とすべり系を調査し、LLSVPの地震波異方性との関係を考察することを目的とする。 本研究では回転式ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)を用いて、Wüstite多結晶体のねじりの変形実験を行った。試料には実験前後の歪測定のためのPtマーカーを集束イオンビーム(FIB)により蒸着することで、試料回転軸に平行に配置した。変形実験は、圧力8-63 GPa、温度300-600 K、歪速度一定の条件で、大型放射光施設SPring-8 BL47XUにて行った。変形実験前後のX線ラミノグラフィー法によるPt歪マーカーの観察、および変形実験中のその場X線回折測定(XRD)を行った。X線ラミノグラフィー法から得られたPtマーカーの再構成断面像から試料の歪を決定し、1角度(回転軸に対して60°方向)XRDより変形実験中のWüstiteの応力とCPOの決定を試みた。CPOの解析からは、B1構造を持つWüstiteが変形後に、[100]が圧縮軸方向とせん断方向に強く配向し、[101]がせん断方向に弱く配向する組織が観察された。実験後、減圧し回収した試料についてSPring-8 BL10XUで取得した多角度XRDおよび電子線後方散乱回折(EBSD)測定からCPOを決定し、1角度XRD結果と比較を行った。得られた結果から、LLSVP構成鉱物のCPOの発達とLLSVPの地震波異方性との関係を議論する。
R3P-05