一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

ポスター

R3:高圧科学・地球深部

2023年9月16日(土) 12:00 〜 14:00 83G,H,J (杉本キャンパス)

12:00 〜 14:00

[R3P-13] 高温高圧下でのビスマス研究

*小野 重明1 (1. 海洋研究開発機構)

キーワード:ビスマス

高圧実験において、実験中の発生圧力を正確に知ることは極めて重要である。近年、量子ビームを利用した高圧実験おいては、装置で発生する圧力は、比較的正確に見積もることができる。一方、量子ビームの併用が困難な研究手法が多々あることや、量子ビームの利用機会が限られていることなどの理由から、従来の室内実験の重要性が低下することはなく、今後も精力的に室内実験研究が行われることが予想される。そこで問題となるのは、室内実験における圧力情報の正確さであろう。地球内部科学においては、圧力は深度の情報に対応し、緻密な研究を進める上では、きわめて正確な実験圧力条件を知ることが不可欠である。そこで本研究においては、室内実験で頻繁に利用されるビスマスの相図について、相関係や相転移圧力の再決定を行い、従来から使われている相図との比較を行った。
 高圧実験では、マルチアンビル型装置を用い、放射光X線回折実験を行った。実験はPR-AR(KEK)を利用した。実験方法は、これまで我々のグループが行ってきた方法とほぼ同様の手法を用いた[1]。実験の温度圧力履歴は、まず目的にプレス過重まで加圧し、加圧後に目的の温度まで昇温し、データ取得後、次の目的温度へ変更し、データを取得するという事を繰り返した。加熱中に試料の粉末X線回折データを取得し、安定相の同定を行った。
 本研究で得られたデータから見積もられる相図は、過去の研究結果[2]とおおよその一致を示した。しかしながら、相図の3重点の相関係において、過去の研究と異なる点が確認された。過去の研究では、II相-IV相-液相の3重点とII相-III相-IV相の3重点が報告されていた。本研究では、II相-III相-液相とIII相-IV相-液相の3重点が確認された。この3重点の温度圧力条件は極めて近いため、過去の研究では、実験誤差の大きさなどの理由から、3重点の見積もりが誤っていた可能性が指摘されるであろう。

[1] S. Ono (2018) High-pressure phase transition of bismuth, High Pressure Research, 38:4, 414-421, DOI: 10.1080/08957959.2018.1541456
[2] W. Klement Jr. et al. (1963) Phase diagrams of Arsenic, Antimony, and Bismuth at Pressure up to 70 kbars, Physical Review, 131, 632-637.