11:00 AM - 11:15 AM
[R4-08] U(VI) uptake during transformation of monohydrocalcite
Keywords:monohydrocalcite, uranium, coprecipitation
ウラン(U(Ⅵ))はpHとCO₂分圧の変化により様々な化学形態をとり、低pH条件では陽イオン、高pH条件では陰イオンとしての挙動を示すという特徴がある。環境中に溶出する微量元素の濃度は鉱物表面への吸着によって制御され、吸着は主に鉱物表面の電荷に依存している。低pH条件では鉱物表面が正に帯電するため陰イオンが吸着し、高pH条件では表面が負に帯電するため陽イオンが吸着し易い傾向がある。有害とされる重金属元素は、一般的に比較的広範囲のpH条件で主に陽イオンとして存在し、溶液のpHを高く保つことで除去されている。一方で、U(Ⅵ)はpHが高くなることにより、化学種が陰イオンの形態へと変化する。したがって、高pH条件では負に帯電した鉱物表面とU(Ⅵ)の溶存種が反発し、環境中へのU(Ⅵ)の溶出が懸念される。
モノハイドロカルサイト(MHC;CaCO₃・H₂O)は、天然に存在する含水炭酸カルシウムである。MHCはカルサイトやアラゴナイトに対して準安定相であり、その不安定性から微量元素に対する反応性が高いことが指摘されている(Fukushi et al., 2011)。また、MHCは溶解と再沈殿によって安定相へと変質する(Munemoto and Fukushi, 2008)。このような変質過程において、MHCは表面電荷特性に依らず構造内にヒ素や鉛などの微量元素を取り込むことができる(Munemoto et al., 2014; Fukushi et al., 2016)。以上の性質により、MHCを溶液中に添加することにより自発的に有害元素の除去が進むため、MHCは高pH条件においてU(VI)の効果的な除去材料となることが期待される。
本研究では、MHCの懸濁液にU(Ⅵ)溶液を添加した系における鉱物組成とU(Ⅵ)濃度の時間変化を観察する取り込み実験を行い、変質する鉱物相の違いによるU(Ⅵ)の取り込み挙動の変化や取り込みメカニズムについて検討した。実験に用いたMHCは実験室で合成した。取り込み実験では、U(Ⅵ)濃度5μM、イオン強度0.01 M、固液比1 g/Lの初期反応溶液をそれぞれ50 ml調製した。この一連の実験に加え、Mg濃度1 mMとなるようにMgCl₂・6H₂O溶液を添加し、その他同様の溶液条件となるように実験を行った。
各反応時間のMHCの変質挙動とU(Ⅵ)の取り込み量を観察した結果、溶液中のMgの有無により、MHCが変質した際のU(Ⅵ)の除去率に有意な差が認められた。溶液中にMgを含む場合、MHCはアラゴナイトに変質し、U(Ⅵ)の除去率は上昇した。一方、Mgを含まない場合、MHCはカルサイトに変質し、U(Ⅵ)の除去率は低下した。このことから、アラゴナイトの生成はU(Ⅵ)を溶液から効果的に除去し、カルサイトの生成はU(Ⅵ)の除去に寄与しないことが示唆された。
本実験のpH条件(pH8.2~9.0)では[UO₂(CO₃)₃⁴⁻]が主要なU(Ⅵ)の溶存種であった。反応後の固体試料のX線吸収微細構造(XAFS)から、アラゴナイトの構造内に取り込まれたU(Ⅵ)は[UO₂(CO₃)₃⁴⁻]の赤道配位を維持しながら取り込まれていることが示唆された。一方、カルサイトの構造はU(Ⅵ)溶存種の配位環境を変化させる必要があることが報告されている(Reeder et al., 2000)。このことから、アラゴナイトへのU(Ⅵ)の取り込みは、溶存種との構造の類似性が寄与していると考えられる。したがって、アラゴナイト中のU(Ⅵ)は構造的に安定であるため、溶液中のU(Ⅵ)を効果的に除去していると推察される。
モノハイドロカルサイト(MHC;CaCO₃・H₂O)は、天然に存在する含水炭酸カルシウムである。MHCはカルサイトやアラゴナイトに対して準安定相であり、その不安定性から微量元素に対する反応性が高いことが指摘されている(Fukushi et al., 2011)。また、MHCは溶解と再沈殿によって安定相へと変質する(Munemoto and Fukushi, 2008)。このような変質過程において、MHCは表面電荷特性に依らず構造内にヒ素や鉛などの微量元素を取り込むことができる(Munemoto et al., 2014; Fukushi et al., 2016)。以上の性質により、MHCを溶液中に添加することにより自発的に有害元素の除去が進むため、MHCは高pH条件においてU(VI)の効果的な除去材料となることが期待される。
本研究では、MHCの懸濁液にU(Ⅵ)溶液を添加した系における鉱物組成とU(Ⅵ)濃度の時間変化を観察する取り込み実験を行い、変質する鉱物相の違いによるU(Ⅵ)の取り込み挙動の変化や取り込みメカニズムについて検討した。実験に用いたMHCは実験室で合成した。取り込み実験では、U(Ⅵ)濃度5μM、イオン強度0.01 M、固液比1 g/Lの初期反応溶液をそれぞれ50 ml調製した。この一連の実験に加え、Mg濃度1 mMとなるようにMgCl₂・6H₂O溶液を添加し、その他同様の溶液条件となるように実験を行った。
各反応時間のMHCの変質挙動とU(Ⅵ)の取り込み量を観察した結果、溶液中のMgの有無により、MHCが変質した際のU(Ⅵ)の除去率に有意な差が認められた。溶液中にMgを含む場合、MHCはアラゴナイトに変質し、U(Ⅵ)の除去率は上昇した。一方、Mgを含まない場合、MHCはカルサイトに変質し、U(Ⅵ)の除去率は低下した。このことから、アラゴナイトの生成はU(Ⅵ)を溶液から効果的に除去し、カルサイトの生成はU(Ⅵ)の除去に寄与しないことが示唆された。
本実験のpH条件(pH8.2~9.0)では[UO₂(CO₃)₃⁴⁻]が主要なU(Ⅵ)の溶存種であった。反応後の固体試料のX線吸収微細構造(XAFS)から、アラゴナイトの構造内に取り込まれたU(Ⅵ)は[UO₂(CO₃)₃⁴⁻]の赤道配位を維持しながら取り込まれていることが示唆された。一方、カルサイトの構造はU(Ⅵ)溶存種の配位環境を変化させる必要があることが報告されている(Reeder et al., 2000)。このことから、アラゴナイトへのU(Ⅵ)の取り込みは、溶存種との構造の類似性が寄与していると考えられる。したがって、アラゴナイト中のU(Ⅵ)は構造的に安定であるため、溶液中のU(Ⅵ)を効果的に除去していると推察される。