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[R4-09] 福島第一原発由来CsMPのB同位体が示す制御棒の揮発
キーワード:福島第一原発、高濃度Cs含有微粒子、ボロン同位体、制御棒、二次イオン質量分析計
2011 年、福島第一原発炉内には、中性子を吸収して核分裂反応を制御していた制御棒(炭化ホウ素(B4C)で構成される)も燃料デブリ中に残存し、核分裂の連鎖反応を防ぐ重要な要因になっている。一方でメルトダウン時には揮発したSiとCsが凝縮して原子炉内で大量のCsMPが生成し、環境中に放出された。本研究は4つのCsMPに含まれるホウ素同位体、10Bと11B、リチウム同位体、6Liと7Liを初めて定量することに成功し、10+11Bは1518~6733 mg kg-1、7Liは11.99~1213 mg kg-1含まれることを示した。CsMP中の11B/10B同位体比は4.15~4.21と分析され、天然存在比4.05よりも高くなった。また7Li/6Li同位体比も213~406と分析され、天然存在比12.5より高い。これはメルトダウン以前にB4C制御棒の中で10B(n,α)7Li核反応が起きていた証拠であり、ケイ素やセシウムが揮発、凝縮してCsMPが生成する時にB4C制御棒から揮発していたホウ素とリチウムが同時に取り込まれたことを示している。その時、BりもLiの方がより揮発して取り込まれたことも分かった。また、熱力学計算コードより、揮発したホウ素の主要な化学形態がCsBO2であることも示唆された。一方でCsMPのホウ素含有量に基づき、CsMPの飛散量(>3×1012個)から原発から外部に放出されたホウ素量を計算すると0.024 g程度、放射性核種を大量に含んだ2011年3月14~16日頃に放出された大気流(プルーム2と3)のほとんどがCsMPだったと仮定しても放出されたホウ素量は62 gと計算される。これから、原子炉内にはB4Cが十分な量残留していることが分かるが、揮発したホウ素は原子炉内部、周辺で容易に凝縮、沈積する性質があるため、デブリ内部と周囲における不均一なホウ素分布に注意しながらデブリの取り出し方法を選定し、安全に遂行する必要があるだろう。