12:00 PM - 2:00 PM
[R4P-02] Formation process of carbonate minerals in nonaqueous solvents
Keywords:Carbonate minerals, Hydration, Amorphous calcium carbonate
はじめに
炭酸塩鉱物はCO2のリザーバーとして有用であり、その形成メカニズムについては古くから研究が行われてきた。近年、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を前駆物質とする結晶の形成過程が注目を集め、数多くの研究が行われた結果、その形成過程は、従来想像されてきたよりも多様であることが明らかになっている。このような形成プロセスを決定づける大きな要因は、陽イオンの水和状態の違いであると考えられる。特に溶存Mgイオンは、ACCの安定性や、最終的に形成する結晶相に、大きな影響を与えることが知られているが、溶液中で強い水和殻を形成しており、その水和状態の違いが、炭酸カルシウムの形成プロセスに大きな影響を与える可能性がある。
そこで私たちは、誘電率や双極子モーメントが水と比較的近いホルムアミド(HCNH2)を、水と一定の割合で混合した非水溶媒を用いることで、陽イオンの水和状態をコントロールすることを試みた。その条件下でMg-Ca-CO3系の合成実験を行い、形成相やそれらの相転移の様子を確認することで、Mgイオンの水和が炭酸塩形成プロセスに与える影響について考察した。さらに、Mgイオンは、その脱水和のしにくさから、固相には取り込まれにくいことが知られてきたことから、水和状態をコントロールすることによる生成物への取り込み量の変化もあわせて検討する。
手法
本研究では、溶媒として水とホルムアミドを混合したものを用いた。このとき溶媒中のホルムアミドが体積比で0,10,25%となるように調整した。それらを用いて、CaCl2・2H2OとMgCl2・6H2Oをそれぞれ10mM含む溶液と、Na2CO3を20mM含む溶液を50mLずつ作成し、混合することで炭酸塩を合成した。混合後は密閉し、25℃に設定したインキュベーター内で溶液を攪拌した。混合直後、1時間、2時間、24時間後に実験溶液をろ過することで析出物を回収し、デシケーター内で1日乾燥した。その後、粉末X線回折装置により回収試料の相の同定を行うとともに、SEM-EDSを用いて形態観察及び組成分析を行った。
結果と考察
いずれの実験においても溶液混合直後に白濁が生じた。回収した析出物について粉末X線回折実験を行った結果、これらは非晶質相であることが明らかになった。EDSを用いて定性分析を行ったところ、これらはある程度のMgを含むACCであることが確認された。溶媒として水のみを用いた実験では、1時間後に回収された析出物は大部分が同様の非晶質であった。しかし、2時間経過後に回収された析出物はほとんどがモノハイドロカルサイトの結晶となっており、溶媒媒介転移が起こったことが示唆された。それに対して、溶媒として10%ホルムアミドを混合した溶液を用いた実験では、1時間経過後の析出物はほぼすべてモノハイドロカルサイトであった。水溶液中におけるACCの安定性には、溶存するMgイオンが寄与しているとの報告もあることから、本研究の結果は、非水溶媒を用いたことによるMgイオンの水和状態の違いが、ACCの安定性に影響を及ぼしたものと考えらえる。
一方、25%ホルムアミドを混合した溶液を用いた実験においては、混合直後にはACCであった析出物が1時間後にはMgを約10%含有しているカルサイトとなっていたことが、X線回折ピーク位置の解析から確認された。この結果は、水和状態の違いがACCから転移する結晶相にも影響を与えている可能性を示唆している。さらに非水溶媒の割合を変えた環境で実験を行うことにより、 Mgイオンの水和の影響を、定量化して解析することができるようになると期待できる。
炭酸塩鉱物はCO2のリザーバーとして有用であり、その形成メカニズムについては古くから研究が行われてきた。近年、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を前駆物質とする結晶の形成過程が注目を集め、数多くの研究が行われた結果、その形成過程は、従来想像されてきたよりも多様であることが明らかになっている。このような形成プロセスを決定づける大きな要因は、陽イオンの水和状態の違いであると考えられる。特に溶存Mgイオンは、ACCの安定性や、最終的に形成する結晶相に、大きな影響を与えることが知られているが、溶液中で強い水和殻を形成しており、その水和状態の違いが、炭酸カルシウムの形成プロセスに大きな影響を与える可能性がある。
そこで私たちは、誘電率や双極子モーメントが水と比較的近いホルムアミド(HCNH2)を、水と一定の割合で混合した非水溶媒を用いることで、陽イオンの水和状態をコントロールすることを試みた。その条件下でMg-Ca-CO3系の合成実験を行い、形成相やそれらの相転移の様子を確認することで、Mgイオンの水和が炭酸塩形成プロセスに与える影響について考察した。さらに、Mgイオンは、その脱水和のしにくさから、固相には取り込まれにくいことが知られてきたことから、水和状態をコントロールすることによる生成物への取り込み量の変化もあわせて検討する。
手法
本研究では、溶媒として水とホルムアミドを混合したものを用いた。このとき溶媒中のホルムアミドが体積比で0,10,25%となるように調整した。それらを用いて、CaCl2・2H2OとMgCl2・6H2Oをそれぞれ10mM含む溶液と、Na2CO3を20mM含む溶液を50mLずつ作成し、混合することで炭酸塩を合成した。混合後は密閉し、25℃に設定したインキュベーター内で溶液を攪拌した。混合直後、1時間、2時間、24時間後に実験溶液をろ過することで析出物を回収し、デシケーター内で1日乾燥した。その後、粉末X線回折装置により回収試料の相の同定を行うとともに、SEM-EDSを用いて形態観察及び組成分析を行った。
結果と考察
いずれの実験においても溶液混合直後に白濁が生じた。回収した析出物について粉末X線回折実験を行った結果、これらは非晶質相であることが明らかになった。EDSを用いて定性分析を行ったところ、これらはある程度のMgを含むACCであることが確認された。溶媒として水のみを用いた実験では、1時間後に回収された析出物は大部分が同様の非晶質であった。しかし、2時間経過後に回収された析出物はほとんどがモノハイドロカルサイトの結晶となっており、溶媒媒介転移が起こったことが示唆された。それに対して、溶媒として10%ホルムアミドを混合した溶液を用いた実験では、1時間経過後の析出物はほぼすべてモノハイドロカルサイトであった。水溶液中におけるACCの安定性には、溶存するMgイオンが寄与しているとの報告もあることから、本研究の結果は、非水溶媒を用いたことによるMgイオンの水和状態の違いが、ACCの安定性に影響を及ぼしたものと考えらえる。
一方、25%ホルムアミドを混合した溶液を用いた実験においては、混合直後にはACCであった析出物が1時間後にはMgを約10%含有しているカルサイトとなっていたことが、X線回折ピーク位置の解析から確認された。この結果は、水和状態の違いがACCから転移する結晶相にも影響を与えている可能性を示唆している。さらに非水溶媒の割合を変えた環境で実験を行うことにより、 Mgイオンの水和の影響を、定量化して解析することができるようになると期待できる。