11:15 AM - 11:30 AM
[R5-09] On the relationship between modal abundances of minerals and degrees of aqueous alteration of the brecciated fragments in the Orgueil CI chondrite
Keywords:CI chondrite, Orgueil meteorite, modal abundance
はじめに:CIコンドライトは、多くの元素存在比が太陽組成とよく一致することから、太陽系で最も原始的な隕石と考えられている。近年、JAXAの探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料が、化学的・鉱物学的にCIコンドライトグループとほぼ一致することが報告されている [e.g., 1-3]。CIコンドライトの主要構成鉱物は層状ケイ酸塩、マグネタイト、硫化鉄(磁硫鉄鉱)、炭酸塩、リン酸塩、カンラン石、輝石であるが [4,5]、CIコンドライトは岩石学的・鉱物学的に不均質な角礫岩であり、様々な大きさや岩相の異なる岩片で構成される。先行研究ではCIコンドライトの異なる隕石間の鉱物モード組成の違いを調査しているが、個々の隕石内の岩片の不均質性についての情報は不十分である[6,7]。CIコンドライトは角礫化していることが大きな特徴であるため、個別の隕石ごとの鉱物モード組成よりも岩片ごとの鉱物モード組成の方がより重要であると考え、本研究では、Orgueil隕石の個々の岩片に注目して、鉱物モード組成を比較することで、岩片同士の不均質性を議論することを目的とする。
試料と手法:試料としてOrgueil隕石の1~3mmサイズの小粒子3つの研磨片と、1.5 cm~2 cmの大きな試料の研磨片を用意した。まず光学顕微鏡による観察を行い、次にFE-EPMA (JEOL JXA-8530F)を用いて、各試料について15元素の元素マッピングを実施した。EPMA分析によって得られた元素マッピングの結果から、ImageJソフトを用いて鉱物モード組成を求めた。また、各試料中の個々の角礫化岩片についても同様の解析を行った。
結果と考察:EPMA分析から、Orgueil隕石は主に200 μm~2,3 mmの範囲の岩片で主に構成される角礫岩であることが観察された。まず、小粒子3つの試料について、研磨片全体の鉱物モード組成を求め、次に、角礫化岩片であると明確に識別できる21の岩片について、鉱物モード組成を求めた。大きい粒子についても、角礫化岩片であると明確に識別できる12の岩片について、同様に鉱物モード組成を求めた。
小粒子3試料と大きな1試料で分析した全33岩片の鉱物モード組成をまとめると表1のようになる(硫酸塩を除いて100%に規格化)。カンラン石と輝石が岩片に含まれる場合、マグネタイトの含有量は平均以下となる傾向がある。マグネタイトはCI母天体における水質変成が進むことで形成される二次鉱物であるのに対し、カンラン石や輝石は水質変成前から存在し、水質変成を経験するほど存在量が減っていく鉱物であると考えられるので、このような岩片は、他の岩片よりも水質変成の影響が少ない岩片であると推測できる。マグネタイトとドロマイトはどの岩片にもある程度含まれているが、強い相関関係はみられなかった。小粒子中の岩片サイズが小さいこと、解析した岩片の数が少ないことからデータにばらつきが多く、また、マップの解像度が足りないため、本来みられる相関関係が示されていない可能性が考えられる。
CIコンドライト隕石は地球での風化を経験した際、微小な硫化物が変質し、脈状の硫酸塩を形成したことが指摘されており[8]、硫酸塩を除いて規格化することで地球風化の影響を考慮して鉱物モード組成を比較することができるが、地球風化を受ける前の硫化物の含有量を推測することは難しい。リュウグウ試料は地球風化の影響を受けていないため、CIコンドライト試料とリュウグウ試料を比較する際には、地球風化の影響を考慮することが重要であり、また、CI コンドライトは岩片によって異なる性質や水質変成の程度が反映されている可能性があるので、今後CIコンドライトとリュウグウ試料の研究では、試料全体だけでなく、角礫化したそれぞれの岩片に注目することが必要である。
参考文献 [1] Yada, T. et al. (2021) Nature Astron. 6, 214–220. [2] Yokoyama, T. et al. (2022) Science, eabn7850. [3] Nakamura, T. et al. (2022) Science, eabn8671. [4] Tomeoka, K., & Buseck, P. R. (1988) GCA, 52, 1627-1640. [5] Lee, M. R., & Nicholson, K. (2009) EPSL, 280, 268-275. [6] Morlok, A. et al. (2006) GCA, 70, 5371-5394. [7] Alfing, J. et al. (2019) Chem. Erde, Geochem., 79, 125532. [8] Gounelle, M., & Zolensky, M. E. (2001) MAPS, 36, 1321-1329.
試料と手法:試料としてOrgueil隕石の1~3mmサイズの小粒子3つの研磨片と、1.5 cm~2 cmの大きな試料の研磨片を用意した。まず光学顕微鏡による観察を行い、次にFE-EPMA (JEOL JXA-8530F)を用いて、各試料について15元素の元素マッピングを実施した。EPMA分析によって得られた元素マッピングの結果から、ImageJソフトを用いて鉱物モード組成を求めた。また、各試料中の個々の角礫化岩片についても同様の解析を行った。
結果と考察:EPMA分析から、Orgueil隕石は主に200 μm~2,3 mmの範囲の岩片で主に構成される角礫岩であることが観察された。まず、小粒子3つの試料について、研磨片全体の鉱物モード組成を求め、次に、角礫化岩片であると明確に識別できる21の岩片について、鉱物モード組成を求めた。大きい粒子についても、角礫化岩片であると明確に識別できる12の岩片について、同様に鉱物モード組成を求めた。
小粒子3試料と大きな1試料で分析した全33岩片の鉱物モード組成をまとめると表1のようになる(硫酸塩を除いて100%に規格化)。カンラン石と輝石が岩片に含まれる場合、マグネタイトの含有量は平均以下となる傾向がある。マグネタイトはCI母天体における水質変成が進むことで形成される二次鉱物であるのに対し、カンラン石や輝石は水質変成前から存在し、水質変成を経験するほど存在量が減っていく鉱物であると考えられるので、このような岩片は、他の岩片よりも水質変成の影響が少ない岩片であると推測できる。マグネタイトとドロマイトはどの岩片にもある程度含まれているが、強い相関関係はみられなかった。小粒子中の岩片サイズが小さいこと、解析した岩片の数が少ないことからデータにばらつきが多く、また、マップの解像度が足りないため、本来みられる相関関係が示されていない可能性が考えられる。
CIコンドライト隕石は地球での風化を経験した際、微小な硫化物が変質し、脈状の硫酸塩を形成したことが指摘されており[8]、硫酸塩を除いて規格化することで地球風化の影響を考慮して鉱物モード組成を比較することができるが、地球風化を受ける前の硫化物の含有量を推測することは難しい。リュウグウ試料は地球風化の影響を受けていないため、CIコンドライト試料とリュウグウ試料を比較する際には、地球風化の影響を考慮することが重要であり、また、CI コンドライトは岩片によって異なる性質や水質変成の程度が反映されている可能性があるので、今後CIコンドライトとリュウグウ試料の研究では、試料全体だけでなく、角礫化したそれぞれの岩片に注目することが必要である。
参考文献 [1] Yada, T. et al. (2021) Nature Astron. 6, 214–220. [2] Yokoyama, T. et al. (2022) Science, eabn7850. [3] Nakamura, T. et al. (2022) Science, eabn8671. [4] Tomeoka, K., & Buseck, P. R. (1988) GCA, 52, 1627-1640. [5] Lee, M. R., & Nicholson, K. (2009) EPSL, 280, 268-275. [6] Morlok, A. et al. (2006) GCA, 70, 5371-5394. [7] Alfing, J. et al. (2019) Chem. Erde, Geochem., 79, 125532. [8] Gounelle, M., & Zolensky, M. E. (2001) MAPS, 36, 1321-1329.