11:45 〜 12:00
[R6-07] 近畿領家帯青山高原地域に産する花崗岩類のジルコンU-Pb年代
キーワード:花崗岩、ジルコン、メルト包有物、準安定相
領家帯は西南日本において約800kmにわたって分布し、主に白亜紀後期の高温低圧型変成岩類と、花崗岩類から構成される。花崗岩類に関しては、黒雲母および角閃石のK-Ar年代、黒雲母および全岩のRb-Sr年代が西から東にかけて若くなるということが知られている [1, 2]。しかし、ジルコンのU-Pb年代やCHIMEモナズ石年代は、この傾向に一致しないという報告もある [3, 4]。領家帯柳井地域や三河地域では、ジルコンU-Pb年代測定により、花崗岩類の固結年代が決定されているが、他地域の報告は未だ少ない [4-6]。近畿領家帯青山高原地域では、変成岩類と面構造を持たない花崗岩類が北部に、面構造を持つ花崗岩類が南部に広く露出する。これまで、貫入関係に基づく花崗岩類の分類が行われてきたが [7]、各岩相に対して、統一的な分析方法による年代測定は行われてこなかった。そこで本研究では、青山高原地域に産する5種の花崗岩類に対して、LA-ICPMSを用いたジルコンU-Pb年代測定を行った結果を報告する。
本研究では、加太花崗閃緑岩、阿保花崗岩、城立トーナル岩、美杉トーナル岩、君ヶ野花崗閃緑岩の年代測定をおこなった。阿保花崗岩は、2地点から採取した2試料を分析した。固結年代の推定においては、97-103 % のコンコーダンスを基準とし、CL像を用いて火成作用で晶出したと考えられる分析点を選定した。その結果、美杉トーナル岩以外の5試料では、得られた年代データのばらつきが大きく、加重平均年代を計算するに十分なデータの集中が得られなかった。そのため、各試料の固結年代は、加太花崗閃緑岩 ca. 83-75 Ma、阿保花崗岩 ca. 76-65 Ma および ca. 77-70 Ma、城立トーナル岩 ca. 92-84 Ma、美杉トーナル岩 75 ± 1 Ma、君ヶ野花崗閃緑岩 ca. 110-99 Maと制約した。
ジルコン中の包有物は、いずれの花崗岩類においても、燐灰石、石英、アルバイト、カリ長石が多く、Caを含む斜長石はほとんど見られない。また、美杉トーナル岩中のジルコンを詳細に調べたところ、ca. 73 Maの年代値を示す領域に、SiO2相・Na-rich相・燐灰石・ガラスを含む多相固体包有物が確認された。電子回折図形から、SiO2相とNa-rich相は、それぞれcristobalite とkumdykoliteと同定された。kumdykoliteはアルバイトの高圧多形である。cristobalite とkumdykoliteの共存は、高温変成岩中のザクロ石に包有されるナノ花崗岩からの報告があり、非平衡組織であると解釈されている [8]。本研究で見いだされたcristobalite とkumdykoliteも先行研究同様に準安定相と考えられ、ジルコンに包有されたメルトから急速に結晶化した可能性がある。このように、ジルコン中の包有物を精査することで、花崗岩類が示す固結年代値および年代幅の意義を検討することが可能になると考えられる。
引用文献 [1] Nakajima (1994) Lithos. [2] Nakajima et al. (1990) CMP. [3] Suzuki & Adachi (1998) JMG. [4] Takatsuka et al. (2018) Island Arc. [5] Takatsuka et al. (2018) Lithos.[6] Skrzypek et al. (2016) Lithos. [7] 端山ほか (1982) 地質学雑誌. [8] Ferrero et al. (2016) CMP.
本研究では、加太花崗閃緑岩、阿保花崗岩、城立トーナル岩、美杉トーナル岩、君ヶ野花崗閃緑岩の年代測定をおこなった。阿保花崗岩は、2地点から採取した2試料を分析した。固結年代の推定においては、97-103 % のコンコーダンスを基準とし、CL像を用いて火成作用で晶出したと考えられる分析点を選定した。その結果、美杉トーナル岩以外の5試料では、得られた年代データのばらつきが大きく、加重平均年代を計算するに十分なデータの集中が得られなかった。そのため、各試料の固結年代は、加太花崗閃緑岩 ca. 83-75 Ma、阿保花崗岩 ca. 76-65 Ma および ca. 77-70 Ma、城立トーナル岩 ca. 92-84 Ma、美杉トーナル岩 75 ± 1 Ma、君ヶ野花崗閃緑岩 ca. 110-99 Maと制約した。
ジルコン中の包有物は、いずれの花崗岩類においても、燐灰石、石英、アルバイト、カリ長石が多く、Caを含む斜長石はほとんど見られない。また、美杉トーナル岩中のジルコンを詳細に調べたところ、ca. 73 Maの年代値を示す領域に、SiO2相・Na-rich相・燐灰石・ガラスを含む多相固体包有物が確認された。電子回折図形から、SiO2相とNa-rich相は、それぞれcristobalite とkumdykoliteと同定された。kumdykoliteはアルバイトの高圧多形である。cristobalite とkumdykoliteの共存は、高温変成岩中のザクロ石に包有されるナノ花崗岩からの報告があり、非平衡組織であると解釈されている [8]。本研究で見いだされたcristobalite とkumdykoliteも先行研究同様に準安定相と考えられ、ジルコンに包有されたメルトから急速に結晶化した可能性がある。このように、ジルコン中の包有物を精査することで、花崗岩類が示す固結年代値および年代幅の意義を検討することが可能になると考えられる。
引用文献 [1] Nakajima (1994) Lithos. [2] Nakajima et al. (1990) CMP. [3] Suzuki & Adachi (1998) JMG. [4] Takatsuka et al. (2018) Island Arc. [5] Takatsuka et al. (2018) Lithos.[6] Skrzypek et al. (2016) Lithos. [7] 端山ほか (1982) 地質学雑誌. [8] Ferrero et al. (2016) CMP.