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[R6P-04] 背弧域マントルの希ガス同位体比に基づいた不均質同定
キーワード:マントル捕獲岩、流体包有物
鉱物や岩石から抽出した希ガス同位体比の測定は,試料の起源を調べるために有効である.中国東北部のロンガン火山群は、沈み込んだスラブに関連する成分の影響が予想される.同火山で噴出した 5 つのマントル捕獲岩(スピネルレルゾライト)から 1-2 g のカンラン石粒を粉砕した結果,6.45 Raから0.14 Ra の3He/4Heを 示した.破砕法によって比較的高い 3He/4He を示す試料は,顕微鏡観察で CO2 流体包有物(ネガティブクリスタルタイプ)が多く,5 つの捕獲岩サンプルの値の大きなばらつきの原因は鉱物粒内の包有物タイプの量比にあることが予想された.包有物の形状に基づき,未成熟なものから順に包有物(1),(2),(3)タイプとして分類を行なった. 例としてネガティブクリスタルを示す包有物はタイプ(3)として分類している.そして各試料のカンラン石粒中の 3He/4He と,包有物タイプ(1)から(3)の存在比の相関を検証した.実験では、局所レーザーアブレーション によってタイプ(2),(3)の包有物の希ガス同位体比を紫外線レーザーで直径約 100-200 μm の穴を開けて包有物のガス抽出を行い,希ガス同位体比を分析した.その結果、タイプ(3)の 3He/4He と 40Ar/36Ar は、同じ捕獲岩のカンラン石 1-2 g を破砕法で抽出したものよりいずれも高い傾向を示し,なおかつ典型的な大陸下リソスフェリックマントル (SCLM)的であった.反対にタイプ(2)の包有物は 3He/4He は比較的低く,40Ar/36Ar は大気的であった.つまり,より高い成熟度の包有物に比較的高いヘリウム同位体比が含まれたことになる.包有物の形状の成⻑段階と沈み込んだスラブの影響の存在が示唆される背弧域のテクトニクス を考慮すると,元々は SCLM 的な希ガス同位体組成を持つ上部マントルが,スラブ関連成分に伴う メルトによって後から影響を受けたという現象が捕獲岩中の包有物の形状とその希ガス同位体比に直接反映されていることが示唆される.