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[R6P-06] 九重火山群第四紀マグマの起源や進化過程について
キーワード:島弧マグマ、微量元素、Sr-Nd-Pb同位体、マグマ混合、分別結晶作用
九重火山は約200 kaに活動を開始した,九州東部の西南日本弧火山フロントに位置する活火山である(川辺ほか,2015)。川辺ほか(2015)によれば,九重火山の火山活動は,第1期から第4期の4つのステージに分けられる。第1期から第3期は主に普通角閃石斑晶を含む安山岩マグマが活動し,一部デイサイトマグマを伴う。それに対し,第4期は普通角閃石斑晶を含まない苦鉄質マグマの活動が多く認められている。川辺ほか(2015)は,安山岩中で石英とかんらん石が共存する非平衡な斑晶鉱物組み合わせなどから,苦鉄質マグマと珪長質マグマの混合を,マグマの成因として主張している。これら第四紀マグマの主成分元素組成は小野(1963),太田(1991),川辺ほか(2015)などで報告されているが,微量元素組成や同位体組成はKita et al. (2001)での4試料と芳川ほか(2018)、藤原ほか(2019)での報告にとどまる。そこで本研究では,岩石記載と主成分元素,Sr-Nd-Pb同位体組成分析を行い,藤原(2020)で報告された同試料の微量元素組成も含め,その結果の解析から九重火山の第四紀マグマの進化過程を議論することを目的とした。 岩石記載と主成分化学組成を比較すると,玄武岩質安山岩組成を示す試料には角閃石は含まれず,安山岩およびデイサイトには普遍的に角閃石が含まれる。主成分元素とSiO2含有量の関係を見ると,多くの元素では大局的には直線的な傾向を示すように見えるが,玄武岩質安山岩と安山岩の間に顕著な組成ギャップが認められる。また,TiO2濃度はSiO2含有量の増加に伴いSiO2濃度が約57 wt%までは増加傾向を示すがその後減少に転じる。同様にAl2O3濃度はSiO2濃度が約60 wt%まで単調に減少するが,その後増加するものと減少するものに分かれる。さらに, K2O- SiO2含有量の変化図上ではSiO2濃度約57 wt%で傾きの変化が認められるなど,主成分化学組成の変化傾向全体を単純な2成分混合で説明できない傾向が多数認められた。 微量元素組成は中央海嶺玄武岩(MORB)と比べLILEに富みHFSEに枯渇する典型的な島弧マグマの特徴を示す。また,NbとZr濃度の変化図上で,九重火山群のマグマの組成はIndian MORBの組成範囲に含まれる。このことは,九重火山群直下のマントルウェッジはIndian MORBに類似したものであることを示すと考えられる。各微量元素とSiO2濃度の関係を見ると,同じSiO2濃度範囲でSr濃度が高いグループ(High Sr)と低いグループ(Low Sr)に明瞭に分かれる傾向が認められた。さらに,Low Srは同じSiO2濃度範囲で希土類元素濃度が高いグループ(High REE)と低いグループ(Low REE)に明瞭に区分される。すべてのデータをGdとSrの濃度の変化図にプロットした(下図)。玄武岩質安山岩,安山岩およびデイサイトを形で,High Sr,High REE とLow REEを色で,それぞれ,区別してプロットした。3つのグループは明瞭に異なる傾向を示す。High Srには玄武岩質安山岩と安山岩が含まれ,Low REEには玄武岩質安山岩,安山岩およびデイサイトが,High REEには安山岩が含まれる。このように,九重火山群では少なくてもこれら3系列の第四紀マグマが活動していたことが明らかになった。講演では,これらの九重火山のマグマの起源・進化過程とそれぞれのマグマの成因関係について, サンプルのステージやSr-Nd-Pb同位体組成の解析も加え議論する。