2023 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Poster presentation

R7: Petrology, Mineralogy and Economic geology (Joint Session with Society of Resource Geology)

Fri. Sep 15, 2023 12:00 PM - 2:00 PM 83G,H,J (Sugimoto Campus)

12:00 PM - 2:00 PM

[R7P-02] The alteration zone and estimation of formation temperature of the deposit in Urukami area, Togi gold silver deposit in Ishikawa Prefecture.

[Presentation award entry]

*Taiju Kawasaki1, Maki Hamada1 (1. Kanazawa University)

Keywords:Togi gold-silver vein-type deposit, hydrothermal alteration, formation temperature, low-sulfidation type, Se-type

富来鉱山は石川県羽咋郡志賀町に位置する浅熱水金銀鉱脈鉱床である。富来鉱山の周辺には新第三紀中新世穴水累層群輝石安山岩が分布する。先行研究ではエレクトラム、フィシェサー鉱、ウィッテンボガード鉱、セレンに富むピアース鉱、Ag2S-Ag2Se固溶体鉱物、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、α-ブラス、自然ビスマス、錫石および自然銅の産出について報告しており、これらの鉱物組み合わせから低硫化鉱床およびセレンタイプに分類されると報告している(Hamada et al. 2022)。しかし分類された鉱床タイプでは角銀鉱、濃紅銀鉱、淡紅銀鉱および四面銅鉱などが報告されているため、富来鉱山からも産出する可能性がある。これらの鉱石鉱物を形成する鉱液は、形成時に周囲の岩石に変質を引き起こし、鉱液の性質や鉱液との距離に対応する変質帯を形成する。そのため、変質帯を調査することにより鉱床を形成した鉱液の性質を解明できる可能性があるが、富来鉱山においては鉱液について検討がされていない。本研究では富来鉱山の形成に関わった鉱液の性質を解明するため、生神地区に分布する変質帯、産出する鉱石鉱物および鉱床の形成温度を決定する。 試料は東郷三番抗内および東郷三番抗周辺で、それぞれ15試料および23試料を採取した。すべての試料を水簸した後に粉末X線回折測定を行い、試料中に含まれる粘土鉱物を同定した。東郷三番抗内では坑道入口から緑泥石/モンモリロナイト混合層鉱物(38、45、49、66、70、71、75.5 m)、モンモリロナイト(33、60、86.5、92、95 m)、イライト/モンモリロナイト混合層鉱物(66、70 m)が分布していることが明らかになった。東郷三番抗周辺では、三番抗入口周辺の約100 mの範囲にイライトおよびモンモリロナイト、川沿いおよび三番抗入口周辺の約300 mの範囲にイライト/モンモリロナイト混合層鉱物および緑泥石が分布する。東郷三番抗入口より200 m以北ではカオリナイト、緑泥石およびイライトが試料中に含まれていたが、イライトのポリタイプが続成変質の初期段階にみられる1Mdであったことから、この地点で確認したカオリナイト、緑泥石およびイライトは続成変質作用により形成した粘土鉱物であると考えられる。また、富来鉱山周辺に分布している安山岩中で斜長石が雲母類、直方輝石が雲母類および緑泥石に変質している。以上の結果をまとめると、東郷三番抗内では主に緑泥石/モンモリロナイト混合層鉱物帯およびモンモリロナイト帯、坑道入口より100 mの範囲にはイライト・モンモリロナイト帯、さらにその周囲300 mの範囲にイライト/モンモリロナイト混合層鉱物帯およびプロピライト帯が分布していると考えられる。 東郷三番抗坑道内では、入口より46 mおよび52 mには赤褐色に汚濁した石英脈中がみられる。石英脈中にエレクトラム、Ag2S-Ag2Se固溶体鉱物、角銀鉱、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、青銅が鉱石鉱物として産出する。脈石鉱物は石英、氷長石、方解石である。東郷三番坑の鉱脈の形成温度を、エレクトラム-閃亜鉛鉱温度計(Barton and Toulmin, 1966; Shikazono, 1985)を用いて算出した。この式を利用するにあたり、二つの仮定を設定した。一つは、本研究で産出を認めたAg2S-Ag2Se固溶体鉱物は輝銀鉱であるという仮定である。もう一つは、富来鉱山ではエレクトラム、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱および輝銀鉱は一つの集合体として産出していないが、鉱脈中の狭い範囲での産出が認められたため、同時期に形成したとする仮定である。得られた富来鉱山の鉱床形成温度は171-215℃である。 低硫化鉱床は150 – 250℃の中性の天水主体の鉱液により形成されることが報告されている(White and Hedequist, 1995)。この温度とエレクトラム-閃亜鉛鉱温度計を用いて求めた東郷三番坑の鉱脈の形成温度は一致している。さらに、東郷三番抗内で緑泥石/スメクタイト混合層鉱物およびモンモリロナイト、東郷三番抗周辺でイライト/モンモリロナイト混合層鉱物といった中性の鉱液により形成される粘土鉱物が多く存在することとは低硫化鉱床の鉱液の性質と一致している。したがって、本研究で明らかとなった鉱床の形成温度および変質帯を形成した鉱液の性質に基づいても低硫化鉱床に分類することができる。