9:15 AM - 9:30 AM
[R8-02] Methane-bearing olivine-hosted fluid inclusions in a contact metamorphosed dolomitic marble from the Miyako area, Kitakami Mountains
Keywords:dolomitic marble, olivine, fluid inclusion, methane, contact metamorphism
変成炭酸塩岩は地球史を通して造山帯に普遍的に産出し、地殻における炭素の主要なホストであることに加えて地殻でのCO2(及び含CO2流体)挙動の理解において最適な岩石である(Cook-Kollars et al., 2015; Harada et al., 2021; Satish-Kumar et al., 2010など)。変成炭酸塩岩はその全岩化学組成、変成温度圧力条件、流体組成などにより多様な鉱物組み合わせを示すが、ドロマイト質大理石は炭酸塩鉱物として方解石とドロマイトの両者を含むような変成炭酸塩岩で、しばしば変成かんらん石を含む鉱物組み合わせを生じる。マグネシウムに富む炭酸塩堆積物の接触変成作用でも同様に変成かんらん石を含むようなドロマイト質大理石が形成される。本講演では、接触変成作用を被った炭酸塩堆積物から地質情報を抽出する試みとして、岩手県宮古市上根市の接触変成地域に産するドロマイト質大理石の変成かんらん石に着目し、かんらん石にホストされる流体包有物から得た新知見について紹介する。
岩手県宮古市周辺において、ジュラ紀付加体である北部北上帯(葛巻−釜石帯)は白亜紀前期の宮古花崗岩類の貫入による接触変成作用を被っており、上根市(かみねいち)ではマグネシウムに富んだ炭酸塩堆積物に対する接触変成作用により形成したドロマイト質大理石の岩体が複数みられる。ドロマイト質大理石の変成温度は、鉱物組み合わせ及び方解石―ドロマイト地質温度計から、500–550°Cと見積もられている(石山ほか, 1998)。本研究で着目した上根市の試料は方解石、ドロマイト、かんらん石から構成され、少量のトレモラ閃石、金雲母を含む。かんらん石は一部が蛇紋石化しており、リザダイト・クリソタイル蛇紋石に伴って微細な磁鉄鉱が産する。かんらん石にホストされる初生的な流体包有物 (<10 μm) に対して顕微ラマン分光分析を行ったところ、メタンが確認された。メタンを含む流体包有物はリザダイト蛇紋石を含む。包有物中におけるメタンと蛇紋石の共存から、トラップした流体とホストかんらん石の相互作用による包有物内での蛇紋石化及び、それにより生じた還元的な流体によるメタンの生成が示唆される。かんらん石にホストされる流体包有物内での蛇紋石化に伴うメタン生成は海洋底や造山帯の苦鉄質・超苦鉄質岩に含まれるかんらん石で広く確認されるようになりつつある(Grozeva et al., 2020; Klein et al., 2019; Zhang et al., 2021, 2022)。さらに、飛騨帯の広域変成作用を受けたドロマイト質大理石のかんらん石でも同様のメタン生成が示唆され、かんらん石を含む岩相における流体包有物内での蛇紋石化に伴う無機的なメタン生成の普遍性を支持する。
引用文献
Cook-Kollars et al., 2014. Chem. Geol. 386, 31–48. https://doi.org/10.1016/j.chemgeo.2014.07.013
Grozeva et al., 2020. Philos. Trans. Royal. Soc. A 378, 20180431. https://doi.org/10.1098/rsta.2018.0431
Harada et al., 2021. Isl. Arc 30, e12389. https://doi.org/10.1111/iar.12389
石山大三ほか, 1998. 資源地質 48, 61–76. https://doi.org/10.11456/shigenchishitsu1992.48.61
Klein et al., 2019. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 116, 17666–17672. https://doi.org/10.1073/pnas.1907871116
Satish-Kumar et al., 2010. Lithos 114, 217–228. https://doi.org/10.1016/j.lithos.2009.08.010
Zhang et al., 2021. Geochim. Cosmochim. Acta 296, 1–17. https://doi.org/10.1016/j.gca.2020.12.016
Zhang et al., 2022. J. Geophys. Res. Solid Earth 127, e2022JB024508. https://doi.org/10.1029/2022JB024508
岩手県宮古市周辺において、ジュラ紀付加体である北部北上帯(葛巻−釜石帯)は白亜紀前期の宮古花崗岩類の貫入による接触変成作用を被っており、上根市(かみねいち)ではマグネシウムに富んだ炭酸塩堆積物に対する接触変成作用により形成したドロマイト質大理石の岩体が複数みられる。ドロマイト質大理石の変成温度は、鉱物組み合わせ及び方解石―ドロマイト地質温度計から、500–550°Cと見積もられている(石山ほか, 1998)。本研究で着目した上根市の試料は方解石、ドロマイト、かんらん石から構成され、少量のトレモラ閃石、金雲母を含む。かんらん石は一部が蛇紋石化しており、リザダイト・クリソタイル蛇紋石に伴って微細な磁鉄鉱が産する。かんらん石にホストされる初生的な流体包有物 (<10 μm) に対して顕微ラマン分光分析を行ったところ、メタンが確認された。メタンを含む流体包有物はリザダイト蛇紋石を含む。包有物中におけるメタンと蛇紋石の共存から、トラップした流体とホストかんらん石の相互作用による包有物内での蛇紋石化及び、それにより生じた還元的な流体によるメタンの生成が示唆される。かんらん石にホストされる流体包有物内での蛇紋石化に伴うメタン生成は海洋底や造山帯の苦鉄質・超苦鉄質岩に含まれるかんらん石で広く確認されるようになりつつある(Grozeva et al., 2020; Klein et al., 2019; Zhang et al., 2021, 2022)。さらに、飛騨帯の広域変成作用を受けたドロマイト質大理石のかんらん石でも同様のメタン生成が示唆され、かんらん石を含む岩相における流体包有物内での蛇紋石化に伴う無機的なメタン生成の普遍性を支持する。
引用文献
Cook-Kollars et al., 2014. Chem. Geol. 386, 31–48. https://doi.org/10.1016/j.chemgeo.2014.07.013
Grozeva et al., 2020. Philos. Trans. Royal. Soc. A 378, 20180431. https://doi.org/10.1098/rsta.2018.0431
Harada et al., 2021. Isl. Arc 30, e12389. https://doi.org/10.1111/iar.12389
石山大三ほか, 1998. 資源地質 48, 61–76. https://doi.org/10.11456/shigenchishitsu1992.48.61
Klein et al., 2019. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 116, 17666–17672. https://doi.org/10.1073/pnas.1907871116
Satish-Kumar et al., 2010. Lithos 114, 217–228. https://doi.org/10.1016/j.lithos.2009.08.010
Zhang et al., 2021. Geochim. Cosmochim. Acta 296, 1–17. https://doi.org/10.1016/j.gca.2020.12.016
Zhang et al., 2022. J. Geophys. Res. Solid Earth 127, e2022JB024508. https://doi.org/10.1029/2022JB024508