一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

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R8:変成岩とテクトニクス

2023年9月16日(土) 12:00 〜 14:00 83G,H,J (杉本キャンパス)

12:00 〜 14:00

[R8P-01] 北海道, 幌満かんらん岩体の層状構造を明らかにするための構造岩石学的研究

「発表賞エントリー」

*日原 彩1、田阪 美樹1、栗原 圭佑1、川本 竜彦1、谷内 元2 (1. 静岡大学、2. 産業技術総合研究所)

キーワード:マントル、かんらん岩、幌満かんらん岩、変形、結晶方位

北海道, 幌満かんらん岩体は日高変成帯南縁部に位置するアルプス型のかんらん岩体である. 幌満かんらん岩体は上部マントル起源の新鮮なかんらん岩体で,数種類のかんらん岩とマフィック岩による顕著な層構造が発達している.この層構造の成因として代表的なモデルが二つ提案されている.一つは,メルトが貫入し周囲の岩石と反応することで層構造が形成されたというモデル(Takahashi, 1991)で, もう一つは2種類の岩相が引っ張りと折り畳みを繰り返すことで層構造が形成されたというモデル (寅丸, 1997)である.本研究は, これらのモデルを検証し,幌満かんらん岩体の層状構造の成因を明らかにすることを目的とした.幌満かんらん岩体は地質学的, 岩石学的特徴からUpper Zoneと Lower Zoneに分けられる. Upper Zoneはmafic岩に富み, 数mmから数mスケールの層構造が発達する(Niida, 1974).本研究対象のアポイ岳北尾根の露頭は, Upper Zoneに分類され, spinel-bearing harzburgite-lherzolite(スピネルかんらん岩), plagioclase lherzolite(斜長石かんらん岩), mafic rocks(マフィック岩)の三つの岩相による層構造が発達する. この露頭から岩石試料を採取し構造岩石学的データを解析した.微細構造観察からこれらの岩石は転位クリープで変形したと解釈できる. Electron Back Scattered Diffraction(EBSD)による結晶方位解析では, オリビンの [100]がX軸方向に[010]がZ軸方向に強く集中するCPOファブリックと, [010]がZ軸方向に強い集中を示し, [100], [001]はガードル分布を示すCPOファブリックの2種類が観察された. 採取した岩石のうち約70%が後者のCPOファブリックを示し, このようなオリビンのファブリックは部分溶融したかんらん岩が変形したことを示唆する(Holzman et al., 2003). マイクロXRF分析ではメルトと岩石が化学反応したことを示唆する化学組成が異なる2種類のcpxが観察された.このことから, アポイ岳北尾根露頭の層構造は海嶺下でメルトとかんらん岩が反応して形成されたと提案する.また,岩相に関わらず, 岩石を構成する鉱物の結晶方位の配向性が一定方向に揃っていることから,スピネルかんらん岩と斜長石かんらん岩を含むこれらの層状岩は同一のイベントで変形したことを示す. スピネルかんらん岩, 斜長石かんらん岩, 両者の岩石に線構造に並行配列するパーガス閃石の安定領域を考慮し, これらの岩石は温度約1000℃, 圧力約1GPa, 深さ約30kmのリソスフェア-アセノスフェア境界での変形を最終的に記録していると提案する.