12:00 PM - 2:00 PM
[R8P-07] Mineral and bulk compositions of an outcrop showing a symmetric sequence composed of peridotite and mafic-rock layers of Horoman peridotite, Japan
[Presentation award entry]
Keywords:Peridotite, Mafic-rock, Mantle, refertilization, Chemical composition
幌満かんらん岩体は北海道の日高変成帯の南端に露出し、上部マントルを起源とする多様な超苦鉄質岩からなる。岩体の特徴のひとつとして、大小2種類の対称構造が観察されることが挙げられる。本研究では、1枚のかんらん岩層を中心とした合計層厚3 m以下の小規模な対称構造が観察される、アポイ岳の北尾根に露出するかんらん岩とマフィック岩の互層からなる露頭 (図A、寅丸, 1997, 地質学論集) より岩石試料を採取し、鉱物化学組成と全岩化学組成を測定した。鉱物化学組成分析はEPMAとマイクロXRFを用いて静岡大学で、全岩化学組成分析はXRFとICP-MSを用いて北海道大学で行った。
かんらん岩とマフィック岩は、粒径や鉱物組み合わせが異なる。かんらん岩は比較的粗粒 (~250 µm)で、主にオリビンや輝石から構成される。かんらん岩層中のオリビンのFo値と輝石のMg#は、層ごとに異なり88 - 92と多様であるが、薄片スケールでは±1の範囲内で均質である。マフィック岩は比較的細粒 (~150 µm)で、主に斜長石や輝石から構成され、角閃石も含む。マフィック岩層中のオリビンのFo値や輝石のMg# は、各層ごとに 84 - 88の多様性を持ち、かんらん岩よりも低い値を示す。角閃石はTiに富むパーガス閃石~ケルスート閃石である。マフィック岩は鉱物組み合わせ、鉱物化学組成、N-MORBに類似した全岩微量元素組成などの特徴から、塩谷・新井田 (1997, 地質学論集) や Takazawa et al. (1999, J. Petrol.) のタイプⅠマフィック岩に相当する。また本露頭には、斜長石を含む層と含まない層が細かく互層する部分がある。全岩化学組成は、この互層が薄いかんらん岩とマフィック岩からなることを示す。互層のオリビンのFo値や輝石のMg# は91 - 92の値を示し、薄片スケールでは均質である。寅丸 (1997) や日原ほかなどでは、斜長石かんらん岩と呼んでいる。
かんらん岩とマフィック岩中の単斜輝石は、TiO2とCr2O3の含有量から3タイプに分類できる。(1) 高TiO2・低Cr2O3で特徴づけられるマフィック岩中に含まれるもの、(2) 低TiO2・高Cr2O3で特徴づけられるかんらん岩中に含まれるもの、(3) 高TiO2・高Cr2O3で特徴づけられるかんらん岩中に含まれるもの。(1) と (2) はそれぞれマフィック岩とかんらん岩の本来の化学組成を保持していると考える。一方 (3) タイプの単斜輝石は、かんらん岩とタイプⅠマフィック岩をつくったMORB組成の物質との反応によって形成したと考える。マイクロXRF分析の結果は、かんらん岩とマフィック岩の境界に粒径の大きな輝石を形成し、岩相により (1) と (3) の単斜輝石をもつことを示す。これらの両岩相の反応で形成したと解釈できる単斜輝石では、コアで低くリムで高いTiのゾーニングと、コアで高くリムで低いAlのゾーニングを示す。岩相により含まれる単斜輝石の化学組成には幅があり (図B, C)、以上の特徴は層構造形成時の反応に起因すると考える。
また、層厚5 mm程度の薄いマフィック岩層は斜長石を含むが、角閃石は含まない。単斜輝石はTiO2 やAl2O3の含有量はともに低くCr2O3の含有量は高く、上下に接するかんらん岩層とほとんど同じ化学組成を示す。全岩主要元素は幌満川の斜長石かんらん岩と同一の組成で、全岩微量元素もかんらん岩と同様のパターンを示すことから、他のマフィック岩とは特徴が異なり、かんらん岩との反応がより進んだと解釈する。
以上のことから、アポイ岳北尾根露頭の対称構造は、かんらん岩とマフィック岩が接して反応することでかんらん岩が再肥沃化する過程を示すと考えられ、不均質なマントルを露頭単位で観察できるものの一例と考える。日原ほかは中央海嶺下でメルトと溶け残りマントルが一緒に変形したものと提案する。
かんらん岩とマフィック岩は、粒径や鉱物組み合わせが異なる。かんらん岩は比較的粗粒 (~250 µm)で、主にオリビンや輝石から構成される。かんらん岩層中のオリビンのFo値と輝石のMg#は、層ごとに異なり88 - 92と多様であるが、薄片スケールでは±1の範囲内で均質である。マフィック岩は比較的細粒 (~150 µm)で、主に斜長石や輝石から構成され、角閃石も含む。マフィック岩層中のオリビンのFo値や輝石のMg# は、各層ごとに 84 - 88の多様性を持ち、かんらん岩よりも低い値を示す。角閃石はTiに富むパーガス閃石~ケルスート閃石である。マフィック岩は鉱物組み合わせ、鉱物化学組成、N-MORBに類似した全岩微量元素組成などの特徴から、塩谷・新井田 (1997, 地質学論集) や Takazawa et al. (1999, J. Petrol.) のタイプⅠマフィック岩に相当する。また本露頭には、斜長石を含む層と含まない層が細かく互層する部分がある。全岩化学組成は、この互層が薄いかんらん岩とマフィック岩からなることを示す。互層のオリビンのFo値や輝石のMg# は91 - 92の値を示し、薄片スケールでは均質である。寅丸 (1997) や日原ほかなどでは、斜長石かんらん岩と呼んでいる。
かんらん岩とマフィック岩中の単斜輝石は、TiO2とCr2O3の含有量から3タイプに分類できる。(1) 高TiO2・低Cr2O3で特徴づけられるマフィック岩中に含まれるもの、(2) 低TiO2・高Cr2O3で特徴づけられるかんらん岩中に含まれるもの、(3) 高TiO2・高Cr2O3で特徴づけられるかんらん岩中に含まれるもの。(1) と (2) はそれぞれマフィック岩とかんらん岩の本来の化学組成を保持していると考える。一方 (3) タイプの単斜輝石は、かんらん岩とタイプⅠマフィック岩をつくったMORB組成の物質との反応によって形成したと考える。マイクロXRF分析の結果は、かんらん岩とマフィック岩の境界に粒径の大きな輝石を形成し、岩相により (1) と (3) の単斜輝石をもつことを示す。これらの両岩相の反応で形成したと解釈できる単斜輝石では、コアで低くリムで高いTiのゾーニングと、コアで高くリムで低いAlのゾーニングを示す。岩相により含まれる単斜輝石の化学組成には幅があり (図B, C)、以上の特徴は層構造形成時の反応に起因すると考える。
また、層厚5 mm程度の薄いマフィック岩層は斜長石を含むが、角閃石は含まない。単斜輝石はTiO2 やAl2O3の含有量はともに低くCr2O3の含有量は高く、上下に接するかんらん岩層とほとんど同じ化学組成を示す。全岩主要元素は幌満川の斜長石かんらん岩と同一の組成で、全岩微量元素もかんらん岩と同様のパターンを示すことから、他のマフィック岩とは特徴が異なり、かんらん岩との反応がより進んだと解釈する。
以上のことから、アポイ岳北尾根露頭の対称構造は、かんらん岩とマフィック岩が接して反応することでかんらん岩が再肥沃化する過程を示すと考えられ、不均質なマントルを露頭単位で観察できるものの一例と考える。日原ほかは中央海嶺下でメルトと溶け残りマントルが一緒に変形したものと提案する。