12:00 PM - 2:00 PM
[R8P-14] Petrography of V and Zn-rich gahnite-sillimanite-muscovite gneiss from Menipa, Sør Rondane Mountains, East Antarctica
Keywords:Vanadium, Zinc, metasedimentary rock, Sør Rondane Mountains, East Antarctica
東南極セール・ロンダーネ山地は,ゴンドワナ超大陸形成に伴う造山運動によって形成された高度変成岩類や貫入岩から構成される(Shiraishi, 1997 Antarctic Geol. Map Ser.).当山地を構成する変成岩類は,変成履歴や砕屑性ジルコンの年代分布によって複数のユニットに区分され,約650-600 Maおよび約570-550 Maに起きた2段階の地殻衝突イベントがあったと考えられるようになってきた(Osanai, et al., 2013, Precam. Res.; Adachi et al., in review, JMPS).メーニパ地域は山地中央部に位置する露岩域であり,構造的上位には約620-560 Maの変成年代を示す泥質変成岩類が分布する一方,下位には約570-550 Maの変成作用のみを記録する珪長質変成岩が分布することから(Adachi et al., 2022, JpGU abstract; Kawakami et al., 2022, IAGR annual meeting abstract),この地域にも約570-550 Maの衝突境界が存在することが示唆されている(Adachi et al., 2022, 同上).
バナジウムと亜鉛に富む亜鉛スピネル-珪線石-白雲母片麻岩は,メーニパ地域の構造的上位の泥質変成岩類中に厚さ約30㎝程度のレンズ状に産する.全岩のバナジウムおよび亜鉛の含有量はそれぞれ約2000 ppmと約4000 ppmである.周囲の泥質変成岩(珪線石-黒雲母-ザクロ石片麻岩および含石墨珪線石-黒雲母片麻岩)からは,約600-560 Maの昇温期変成作用を経て、約560 Maに1.0 GPa, 800 oC程度の最高変成条件に達したのち減圧する時計回りの変成履歴が報告されている(Kawakami et al., 2022,同上).この含石墨珪線石-黒雲母片麻岩中には直径10㎝を超える含バナジウムグロシュラーが産し,その粗粒化にはCOH流体が関与している可能性が示唆されている(河上ほか, 2023,鉱物科学会年会講演要旨).亜鉛スピネル-珪線石-白雲母片麻岩の構成鉱物は,石英,石墨,珪線石(V2O3=0.33-1.46 wt%),亜鉛スピネル(V2O3=1.70-2.10 wt%;Cr2O3=1.89-3.00 wt%),斜長石(An=24-30),カリ長石(BaO=1.54-1.82 wt%)であり,二次鉱物として白雲母,緑泥石,副成分鉱物として燐灰石,ルチル,ジルコン,モナザイトを含む.珪線石と白雲母が淡緑色を呈するため岩石全体も緑がかった外観を示す.亜鉛スピネルはごく細粒の閃亜鉛鉱を包有し,細粒の白雲母(V2O3=1.16-2.02 wt%;Cr2O3=0.84-3.59 wt%)と緑泥石(V2O3=0.29-0.42 wt%;Cr2O3=3.03-3.34 wt%)に周囲を置換されている.珪線石も細粒の白雲母(V2O3=0.63-1.62 wt%;Cr2O3=0.19-0.84wt%)の集合体に周囲を置換されている.石墨は片理に沿って白雲母細粒集合体に伴って産することが多く,COH流体の関与がこの岩石でも示唆される.ルチルは,珪線石に囲まれて産する粒子(V2O3=約3.7 wt%,Zr=932-1088 ppm)とマトリックスで白雲母と接して産する粒子(V2O3=1.33-1.74 wt%,Zr=362-703 ppm)がある.これらの岩石組織や鉱物化学組成に基づくと,珪線石と亜鉛スピネルが安定に存在した条件の後に,COH流体が関与した加水後退変成作用が起こって白雲母と緑泥石が形成されたと考えられる.
バナジウムに富む岩石は,ゴンドワナ超大陸形成に伴う衝突境界が想定される場所に沿ってその産出例が報告されている(例えばケニア,Suwa et al. 1996, J. SE Asian Earth Sci.;タンザニア,Feneyrol et al. 2010, C. R. Geosci.;マダガスカル,Cecco & Tait, 2018, Canad. Mineral.).バナジウムの濃集には還元的な環境が必要であり,これらの地域では黒色頁岩が起源であると考えられている.本研究の岩石の起源についてはさらなる解析が不可欠であるが,バナジウムを含む岩石がゴンドワナ超大陸衝突以前に存在した海洋環境の指標となる可能性があるのかもしれない.
バナジウムと亜鉛に富む亜鉛スピネル-珪線石-白雲母片麻岩は,メーニパ地域の構造的上位の泥質変成岩類中に厚さ約30㎝程度のレンズ状に産する.全岩のバナジウムおよび亜鉛の含有量はそれぞれ約2000 ppmと約4000 ppmである.周囲の泥質変成岩(珪線石-黒雲母-ザクロ石片麻岩および含石墨珪線石-黒雲母片麻岩)からは,約600-560 Maの昇温期変成作用を経て、約560 Maに1.0 GPa, 800 oC程度の最高変成条件に達したのち減圧する時計回りの変成履歴が報告されている(Kawakami et al., 2022,同上).この含石墨珪線石-黒雲母片麻岩中には直径10㎝を超える含バナジウムグロシュラーが産し,その粗粒化にはCOH流体が関与している可能性が示唆されている(河上ほか, 2023,鉱物科学会年会講演要旨).亜鉛スピネル-珪線石-白雲母片麻岩の構成鉱物は,石英,石墨,珪線石(V2O3=0.33-1.46 wt%),亜鉛スピネル(V2O3=1.70-2.10 wt%;Cr2O3=1.89-3.00 wt%),斜長石(An=24-30),カリ長石(BaO=1.54-1.82 wt%)であり,二次鉱物として白雲母,緑泥石,副成分鉱物として燐灰石,ルチル,ジルコン,モナザイトを含む.珪線石と白雲母が淡緑色を呈するため岩石全体も緑がかった外観を示す.亜鉛スピネルはごく細粒の閃亜鉛鉱を包有し,細粒の白雲母(V2O3=1.16-2.02 wt%;Cr2O3=0.84-3.59 wt%)と緑泥石(V2O3=0.29-0.42 wt%;Cr2O3=3.03-3.34 wt%)に周囲を置換されている.珪線石も細粒の白雲母(V2O3=0.63-1.62 wt%;Cr2O3=0.19-0.84wt%)の集合体に周囲を置換されている.石墨は片理に沿って白雲母細粒集合体に伴って産することが多く,COH流体の関与がこの岩石でも示唆される.ルチルは,珪線石に囲まれて産する粒子(V2O3=約3.7 wt%,Zr=932-1088 ppm)とマトリックスで白雲母と接して産する粒子(V2O3=1.33-1.74 wt%,Zr=362-703 ppm)がある.これらの岩石組織や鉱物化学組成に基づくと,珪線石と亜鉛スピネルが安定に存在した条件の後に,COH流体が関与した加水後退変成作用が起こって白雲母と緑泥石が形成されたと考えられる.
バナジウムに富む岩石は,ゴンドワナ超大陸形成に伴う衝突境界が想定される場所に沿ってその産出例が報告されている(例えばケニア,Suwa et al. 1996, J. SE Asian Earth Sci.;タンザニア,Feneyrol et al. 2010, C. R. Geosci.;マダガスカル,Cecco & Tait, 2018, Canad. Mineral.).バナジウムの濃集には還元的な環境が必要であり,これらの地域では黒色頁岩が起源であると考えられている.本研究の岩石の起源についてはさらなる解析が不可欠であるが,バナジウムを含む岩石がゴンドワナ超大陸衝突以前に存在した海洋環境の指標となる可能性があるのかもしれない.