2023 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

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Poster presentation

S1: Dynamics of igneous processes (Special Session)

Sat. Sep 16, 2023 12:00 PM - 2:00 PM 83G,H,J (Sugimoto Campus)

12:00 PM - 2:00 PM

[S1P-02] Repressurization of vesiculated magma inferred from volatile distribution in groundmass glass

*Shumpei YOSHIMURA1 (1. Hokkaido University)

Keywords:magma, vesiculation, repressurization, bubble

はじめに
SiO2成分に富む珪長質マグマは,一般に粘性係数が高くガスを解放しにくいため,爆発的な噴火を起こしやすいとされてきた.しかし実際は,爆発せずに溶岩を流すような非爆発的噴火も多く発生する.なぜ,噴火の仕方に違いが生まれるかは,火道内でのマグマの脱ガス過程に違いがあるため考えられており,その詳細な理解が求められている.近年,私たちは溶岩の石基ガラスを対象に塩素濃度マッピング分析を行うことで,非爆発的噴火が起こる際の火道上昇中のマグマの脱ガス履歴を部分的に明らかにすることに成功した.本研究では,同じ手法を爆発的噴火の噴出物に適応し,同時にH2OとCO2のマッピング分析も組み合わせることで,爆発的噴火が起こる際の脱ガス過程を解明することに挑戦した.

手法
新島向山火山の886年の爆発的噴火をモデル噴火とし,そのテフラからガラス質の本質岩片を多数採取した.これは一般的な軽石とは異なり,発泡度が低く,緻密な黒曜石質の物質である.この物質を厚さ200マイクロメートル前後の両面研磨薄片に加工し,FE-EPMAを用いて0.84 mm x 0.63 mmの範囲を対象に塩素濃度マッピング分析を行った.その際,電子ビームの径は2マイクロメートルとした.その後,真空顕微FT-IRを用いて同じ範囲を対象に透過でH2O,CO2のマッピング分析を行った.赤外光のビーム径は20マイクロメートルとした.

結果
石基ガラスの揮発性成分濃度分布は不均質であった.塩素については幅1~2マイクロメートル,長さ数10~数100マイクロメートルの帯状で塩素濃度の高い領域が,1つの方向に伸張して多数配列した状態で分布していた.この高Cl濃度の帯は,試料中にまんべんなく見つかった.試料には気泡がわずかに含まれ,研磨面にはまれに気泡が露出していることがあり,そのようなところではメルトの塩素濃度は高く,塩素濃度の高い帯と直接つながっていた.H2OとCO2についても不均質であり,気泡の付近で濃度が高まる傾向があった.

考察
気泡近傍で揮発性成分の濃度が高まっているという事実は,気泡はメルトに溶解している最中であることを示唆する.わずかに存在する気泡は溶解中の最後の気泡であり,高塩素濃度の帯状領域は,すでに溶解した大部分の気泡のかつての界面(現在では焼結している)を示すと考えられる.塩素の高濃度の帯は一方向に伸びていることから,溶解する直前の気泡の形はその方向に伸びた形状をしていたと考えられる.気泡の溶解を起こすには, 1) マグマを加圧する,または2)メルトの含水量を低下させる,のいずれかが必要である.試料全体で均等に気泡溶解を起こすには,1が都合がよい. 2で均等に気泡溶解を起こすには,メルト含水量がまんべんなく低下する必要があり,それにはメルトの中に開放系の通路がまんべんなく形成されなければならない.もしそのようなことが起きたとすると,その通路は塩素濃度マップにおいて低塩素濃度の帯として認識されるはずであるが,その痕跡は見つからなかった.したがって,気泡の溶解は加圧によるものと考えられる.このことは,爆発的噴火においては,火道を上昇しマグマが減圧発泡を起こす中で,少なくとも一部のマグマは再加圧され,黒曜石質の物質に戻る過程が起きていることを示す.どのような仕組みでこれが起こるかについては現在検討中である.