14:05 〜 14:20
[S2-01] 名張はんれい岩体の風化過程、とくにkaolinite/smectite混合層鉱物の生成について
キーワード:kaolinite/smectite混合層鉱物、はんれい岩、風化、準安定鉱物
[緒言]
名張はんれい岩体の風化過程の研究において、kaolinite/smectite混合層鉱物を見出した。その産状と水質の安定関係からその生成条件を考察する。
[風化分帯]
名張はんれい岩体は、三重県名張地方に分布し、領家帯に属する。主に風化過程を調査した地域は、旧名張鉱山と呼ばれたilmeniteを露天で採掘していた地域で、本岩体の主岩相は、中粒両輝石はんれい岩である。本岩体は、少なくとも中新世以降風化作用を蒙り、表層には厚い風化殻が発達している。原岩はひろくサプロライトに風化し、未風化の原岩は、核岩としてサプロライト中にわずかに点在するのみである。
風化殻は2種の基準に基づき分帯された。第1の基準は、サプロライト中の風化生成鉱物の組合せによるもので、上位より、Ⅰ帯:kaolin mineral(s) - goethite、Ⅱ帯:smectite - kaolin mineral(s) - goethite(±)となる。第2の基準は、サプロライト中に残存する未風化の核岩の産状を用いたもので。上位よりA帯、B帯、C帯となる。上位のA帯は、核岩が、周囲のサプロライトとは外観上異なる褐色・空隙質な「シェル」と呼ばれる風化生成物に覆われて産し、シェル中にはgibbsiteが生成している。中位のB帯は、核岩が直接サプロライトに接して産し、シェルは認められない。Ⅰ帯とA帯は概ね一致し、B帯とC帯の境界は地下水面である。
[試料]
旧名張鉱山地域は、現在は宅地開発され、宅地に作られた小学校脇の新たな法面で試料を採取した。採取地点は、風化帯のⅡ帯で、B帯及びC帯に対応する。採取した試料は、サプロライトと核岩で、サプロライトは詳しく見ると白、淡緑、赤、褐、黒のまだら模様を呈し、核岩は、厚さ3㎜程度の薄いシェルで覆われており、シェルは概ね褐色で白い斑点が混じっている。
[結果]
サプロライトの各色部を手選で分離し、X線回折により構成鉱物を同定した。いずれの部分にもsmectiteが認められ、d(060)値よりその種類を判定した。結果は、白色部がbeidelliteとkaolinite、淡緑色部が、montmorillonite、kaoliniteとchlorite、赤色部がnontroniteとgoethite、褐色部がnontronite、goethite、kaoliniteとamphiboles、黒色部がnontroniteとgeothiteであった。
シェルの構成鉱物は、褐色部・白色部ともに、主体は(hk)バンドに比べ底面反射が著しく弱いkaolinite/smectite混合層鉱物と判断され、微量のamphibolesを伴っている。
[考察]
旧名張鉱山地域の水質分析の結果より、本地域の地下水は、beidellite及びkaoliniteと平衡関係にあると判断され、このような水が原岩と反応し、plagioclaseのような初生鉱物が溶解すると、その近傍で溶解成分の濃度が上昇し、特に溶解度の低いアルミニウムイオンは、濃度の上昇が有意であり、化学ポテンシャルが大きく上昇、準安定鉱物であるhalloysiteが生成されることが示された(Okumura, 1990)。本地域で見出されたkaolinite/smectite混合層鉱物も同様の化学条件下で、plagioclase, pyroxenesのような初生鉱物の溶解により生成したと考えられる。
謝辞:X線回折にあたっては、大阪公立大学(院)理学研究科篠田圭司教授のお世話になった。記して感謝します。
[参考文献]
S. Okumura (1990): Proc. 9th Internat. Clay Conf., Strasbourg, 1989, V.C. Farmer and Y. Tardy (Eds), Sci. Geol., Mem., 85. P.129-138. Strasbourg (FRANCE).
名張はんれい岩体の風化過程の研究において、kaolinite/smectite混合層鉱物を見出した。その産状と水質の安定関係からその生成条件を考察する。
[風化分帯]
名張はんれい岩体は、三重県名張地方に分布し、領家帯に属する。主に風化過程を調査した地域は、旧名張鉱山と呼ばれたilmeniteを露天で採掘していた地域で、本岩体の主岩相は、中粒両輝石はんれい岩である。本岩体は、少なくとも中新世以降風化作用を蒙り、表層には厚い風化殻が発達している。原岩はひろくサプロライトに風化し、未風化の原岩は、核岩としてサプロライト中にわずかに点在するのみである。
風化殻は2種の基準に基づき分帯された。第1の基準は、サプロライト中の風化生成鉱物の組合せによるもので、上位より、Ⅰ帯:kaolin mineral(s) - goethite、Ⅱ帯:smectite - kaolin mineral(s) - goethite(±)となる。第2の基準は、サプロライト中に残存する未風化の核岩の産状を用いたもので。上位よりA帯、B帯、C帯となる。上位のA帯は、核岩が、周囲のサプロライトとは外観上異なる褐色・空隙質な「シェル」と呼ばれる風化生成物に覆われて産し、シェル中にはgibbsiteが生成している。中位のB帯は、核岩が直接サプロライトに接して産し、シェルは認められない。Ⅰ帯とA帯は概ね一致し、B帯とC帯の境界は地下水面である。
[試料]
旧名張鉱山地域は、現在は宅地開発され、宅地に作られた小学校脇の新たな法面で試料を採取した。採取地点は、風化帯のⅡ帯で、B帯及びC帯に対応する。採取した試料は、サプロライトと核岩で、サプロライトは詳しく見ると白、淡緑、赤、褐、黒のまだら模様を呈し、核岩は、厚さ3㎜程度の薄いシェルで覆われており、シェルは概ね褐色で白い斑点が混じっている。
[結果]
サプロライトの各色部を手選で分離し、X線回折により構成鉱物を同定した。いずれの部分にもsmectiteが認められ、d(060)値よりその種類を判定した。結果は、白色部がbeidelliteとkaolinite、淡緑色部が、montmorillonite、kaoliniteとchlorite、赤色部がnontroniteとgoethite、褐色部がnontronite、goethite、kaoliniteとamphiboles、黒色部がnontroniteとgeothiteであった。
シェルの構成鉱物は、褐色部・白色部ともに、主体は(hk)バンドに比べ底面反射が著しく弱いkaolinite/smectite混合層鉱物と判断され、微量のamphibolesを伴っている。
[考察]
旧名張鉱山地域の水質分析の結果より、本地域の地下水は、beidellite及びkaoliniteと平衡関係にあると判断され、このような水が原岩と反応し、plagioclaseのような初生鉱物が溶解すると、その近傍で溶解成分の濃度が上昇し、特に溶解度の低いアルミニウムイオンは、濃度の上昇が有意であり、化学ポテンシャルが大きく上昇、準安定鉱物であるhalloysiteが生成されることが示された(Okumura, 1990)。本地域で見出されたkaolinite/smectite混合層鉱物も同様の化学条件下で、plagioclase, pyroxenesのような初生鉱物の溶解により生成したと考えられる。
謝辞:X線回折にあたっては、大阪公立大学(院)理学研究科篠田圭司教授のお世話になった。記して感謝します。
[参考文献]
S. Okumura (1990): Proc. 9th Internat. Clay Conf., Strasbourg, 1989, V.C. Farmer and Y. Tardy (Eds), Sci. Geol., Mem., 85. P.129-138. Strasbourg (FRANCE).