14:20 〜 14:35
[S2-02] 東北沖プチスポット玄武岩中のスメクタイトの産状と鉱物学的特徴について
「発表賞エントリー」
キーワード:マントル捕獲岩、低温変質、モンモリロナイト、粘土鉱物
東北沖のプチスポットと呼ばれる海底火山の玄武岩(以下、プチスポット玄武岩)は、プレート内部に亀裂が生じることで上部マントル由来の物質がマントル捕獲岩・捕獲結晶として存在することが知られている。このマントル捕獲岩・捕獲結晶はカンラン石や輝石、ザクロ石等から構成されている。また、プチスポット玄武岩中には、茶色に変質したマントル捕獲岩・捕獲結晶も存在している。このマントル捕獲岩・捕獲結晶の変質は、海水との反応によると推定されるが、これまで研究されてこなかった。本研究では、カンラン石の低温での変質過程を明らかにするために、茶色に変質したマントル捕獲岩・捕獲結晶を含むプチスポット玄武岩を対象にX線回折法(XRD)、顕微赤外線分光法(顕微IR)、エネルギー分散型X線分光装置付属の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)で分析を行った。 本研究では、YK21-07S次航海において、しんかい6500を用いた潜航でSite B(北緯37'37.5'、東経149'30.4'、水深約5900m)から採取されたプチスポット玄武岩を用いた。プチスポット玄武岩は、マグマ上昇時に周囲の海底堆積物を取り込んでおり、イライトと含水アルミノ珪酸塩ナトリウムを含んでいると報告されている。 取り込まれた海底堆積物を観察すると、一部に十字沸石の結晶が認められ、低温の岩石-水反応が起きていた可能性が示唆された。プチスポット玄武岩のうち、茶色のマントル捕獲岩・捕獲結晶を含む試料から水簸法によって粘土画分を取り出し、XRDを行った。その結果、底面間隔に相当する14.6Åのピークが認められ、エチレングリコール処理でピークのシフトが認められた。また、(060)反射が15.0Åのピークとして認められた。また、顕微I Rでは、モンモリロナイトに特徴的なAl-OHの伸長に由来する~3620 cm-1のピークが認められた。一方で、取り込まれた海底堆積物からは、XRD、顕微I Rの分析でイライト、十字沸石のピークは認められるが、スメクタイトのピークは認められなかった。これらの分析結果から、プチスポット玄武岩中で、2八面体型のスメクタイトであるモンモリロナイトが形成されていることが示された。SEM-EDSの分析で得た、岩石薄片中のスメクタイトの化学組成を様々な形成環境のスメクタイトと比較し、プチスポット玄武岩中のモンモリロナイトの形成環境を議論する。