一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

口頭講演

S2: 岩石-水相互作用 (スペシャルセッション)

2023年9月14日(木) 14:00 〜 16:30 821 (杉本キャンパス)

座長:土屋 範芳

16:00 〜 16:15

[S2-08] 異なる海域から得られた海洋掘削コア試料に見られる斑れい岩の岩石物性の違いについて

*阿部 なつ江1,2、冨士原 敏也1 (1. 国立研究開発法人海洋研究開発機構、2. 金沢大学大学院自然科学研究科)

キーワード:斑れい岩、国際深海掘削計画、海洋下部地殻、弾性波速度、岩石物性

海洋科学掘削では、過去に海洋下部地殻を構成する物質である斑れい岩の掘削を様々な海域で複数回行っている。大西洋ではODP Legs 153 (Kane FZ)、Leg 209 (15°20'N FZ), IODP Exp. 304 & 305(Atlantis Massif)で、インド洋ではAtlantis Bankと呼ばれる箇所でODP Legs 118 & 176および IODP Exp. 360による掘削、太平洋ではODP Leg 147およびIODP Exp. 345でHess Deepから斑れい岩試料を採取している。これらの斑れい岩コア試料は、海洋下部地殻の実態を解明する貴重な試料である。これらの地域産の斑れい岩と弾性波速度の間には大きな違いがあることが報告されている。つまり、インド洋の斑れい岩試料と太平洋試料は、一般的に海洋下部地殻として想定されている斑れい岩の弾性波速度と密度の関係を示すが、大西洋の斑れい岩試料の弾性波速度は、同程度の密度を示す他の産地の斑れい岩に比べて、約1km/s遅い。この弾性波速度の違いを生ずる原因として、 (1)鉱物組成や変質の程度の違い、(2)空隙率(またはクラック密度)の違い、(3)変形の程度の違い、(4)形成年代(温度)の違い、などが挙げられる。今回これらの原因について検討した結果を紹介し、弾性波速度の違いについて考察したい。