2023 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

S2: Water Rock Interaction (Special Session)

Thu. Sep 14, 2023 2:00 PM - 4:30 PM 821 (Sugimoto Campus)

Chairperson:Noriyoshi Tsuchiya

4:15 PM - 4:30 PM

[S2-09] Fluid induced mylonitization and faulting processes

*Jun-ichi ANDO1,2, Dyuti Prakash Sakar1,2, Hirotoshi Kotama1, Kaushik Das1,2, Gautam Ghosh3,2, Naotaka Tomioka4,2 (1. Hiroshima Univ., 2. Hiroshima Univ. HiPeR, 3. Presidency Univ., 4. JAMSTEC)

Keywords:Fault, Mylonite, pressure solution creep, Phyllosilicate mineral, Mantle porphyroclast

岩石のマイロナイト化に起因して断層が形成される可能性が指摘されている(例えばWehrens et at., 2016)。本研究が対象としている北アルモラ衝上断層(NAT)においても、NATと密接に関係して花崗岩がマイロナイト化している。本研究の目的は、露出の良いNATの近郊において系統的に採取したマイロナイト化した花崗岩の微細組織のキャラクタリゼーションを行い、岩石のマイロナイト化と断層形成の関係を明らかにすることである。
 NATはインド北部 Uttarakhand州 Almora北部に露出する。NATはインド大陸がアジア大陸に衝突することで形成された大規模断層である主中央衝上断層の一部と考えられている。本研究の対象地域では主中央衝上断層は褶曲を受けており、NATの南部が上盤側となっている。上盤には、インド大陸を構成していた花崗岩が主に露出する。NATから南方約8 kmの範囲の調査を行い、花崗岩がマイロナイト化していることを確認した。マイロナイトの面構造はNATの走向とほぼ平行であることから、マイロナイト化とNATの運動は関係していることが分かる。またマイロナイト化した花崗岩は、塑性変形した石英と黒雲母/白雲母といった層状珪酸塩鉱物、それと脆性変形した長石から構成されており、変形が脆性-塑性遷移の深度で生じたことが分かる。マイロナイト化の程度はNATに近づくほど、プロトマイロナイトからマイロナイト、そしてウルトラマイロナイトへと大きくなる傾向が認められる。
 採集した花崗岩マイロナイトに対し、偏光顕微鏡、SEM、SEM-EBSD、TEMといった装置、及びImageJやMATLABを用いて微細組織のキャラクタリゼーションを行った。これによりマイロナイト化の①温度と応力値、②剪断方向、③マイロナイト化に与えた層状珪酸塩鉱物の影響を明らかにした。これらのデータを基に、花崗岩のマイロナイト化とNAT形成の関係を考察した。
 微細組織のキャラクタリゼーションの結果、以下のことが明らかとなった。1)まず重要なことは、花崗岩マイロナイトに占める層状珪酸塩鉱物の量がNATに近づくにつれて増加することである。それに伴って、プロトマイロナイトからマイロナイト、そしてウルトラマイロナイトへとマイロナイトの程度が強くなる。2)石英は波動消光を示し、亜結晶回転によって動的再結晶をしている微細組織が確認できるの。すなわち転位クリープによって塑性変形したことが分かる。石英が亜結晶回転によって動的再結晶を生じるのは約450℃-550℃なので、マイロナイト化はこの温度範囲で進行したと考えられる。また再結晶石英の粒径は約50μmであるが、NATの近傍のみ約25μmと小さくなる。このことはNAT近傍に応力集中が生じたことを示唆する。3)動的再結晶のメカニズムは主に亜結晶回転であるが、層状珪酸塩鉱物の量が増えると圧力溶解クリープによって形成された組織が上書きされる。圧力溶解クリープよって再結晶化した石英のアスペクト比は2-2.5程度と大きくなる。4)長石は脆性変形を受けているが、石英と同様に層状珪酸塩鉱物の量が増えると圧力溶解クリープによる再結晶化が顕著になる。5)再結晶した石英のc 軸の集中度はNATの近傍で、また層状珪酸塩鉱物の含有量が増えると低下する。このことは上記した石英と長石の変形のメカニズムが、層状珪酸塩鉱物の量が増えると圧力溶解クリープに変化することと関係していると考えられる。6)非対称組織と再結晶石英のc軸ファブリックから求めたマイロナイト形成時の剪断方向は、インド大陸の衝突・沈み込みに整合的なtop-to-southである。しかしNAT近傍に露出するマイロナイト中の層状珪酸塩鉱物が示す非対称組織はtop-to-northを示す。
 以上の観察結果は、花崗岩が流体の関与によりマイロナイト化が進行したことを示す。特にウルトラマイロナイト化した領域では、変形メカニズムが圧力溶解クリープへと変化することで岩石強度が低下し、それによりウルトラマイロナイト化した花崗岩部分に応力集中と歪集中が生じ、その結果断層(NAT)が形成されたと考えられる。