12:00 PM - 2:00 PM
[S2P-02] Listvenite and serpentinite from Urayama River, Shikokuchuo City, Ehime Prefecture, Japan
Keywords:listvenite, serpentinite, antigorite, Urayama River, chromite
【はじめに】 リスウェナイトは蛇紋岩などの超苦鉄質岩及び苦鉄質岩の変質によって形成され,苦灰石や菱苦土石などの炭酸塩鉱物や石英を主とし,含クロム白雲母や硫化鉱物を伴うことを特徴とする緑色の岩石である。またリスウェナイトは剪断帯の中や近くに位置することが多い(Hall and Zhao, 1995)。日本では四国の中央構造線の活動に伴う剪断帯及び三波川帯の変成岩中から,蛇紋岩および泥質片岩が原岩と考えられるリスウェナイトなどが報告されている(皆川ほか,2008;白勢ほか,2022)。本研究では愛媛県四国中央市浦山川の中央構造線の活動に伴う剪断帯より,蛇紋岩や泥質片岩が起源のリスウェナイト及び塊状の変質した蛇紋岩を見出したのでそれらの産状と鉱物学的な特徴,成因について報告する。
【産状・試料】 中央構造線付近の浦山川には三波川変成帯に属する泥質片岩の剪断帯が分布している。剪断帯中に幅20 cm - 2 m程度の特徴の異なる3タイプの緑色の層状~塊状のリスウェナイトが共に産する。それぞれのリスウェナイトは下流から淡緑色で脆く片状,濃緑色で硬く塊状,青緑色で硬く塊状である (Figure)。いずれも緑色部には数mmの針ニッケル鉱などの硫化鉱物が含まれる。また青緑色の硬く塊状のリスウェナイトに伴って2 m程度の塊状の暗緑色の蛇紋岩が産する。 【実験手法】 観察,分析にはJEOL製走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-6510LV及びRIGAKU製粉末X線回折装置Ultima IVを用いた。
【結果・考察】 分析の結果, 3タイプのリスウェナイトはいずれも石英,菱苦土石,苦灰石を主とし,淡緑色片状リスウェナイトでは菱鉄鉱,含クロムカオリナイト,濃緑色塊状リスウェナイトではクロム鉄鉱,細粒の含クロム白雲母,青緑色塊状リスウェナイトでは菱鉄鉱,細粒の含クロムモンモリロナイトを含む。また,微量の針ニッケル鉱,ゲルスドルフ鉱,黄鉄鉱,輝コバルト鉱,チタン酸化物,ビオラル鉱が含まれる。淡緑色片状リスウェナイトは石英と菱苦土石,苦灰石による脈状の組織,濃緑色塊状リスウェナイトでは苦灰石脈,青緑色塊状リスウェナイトでは菱苦土石と苦灰石からなる炭酸塩脈が石英や菱苦土石を切るような組織が観察された。淡緑色片状リスウェナイト中の菱苦土石はコアとリムとで鉄の含有量に大きく差があり,コアでは0.09-0.12(apfu),リムでは0.40-0.45(apfu)となり,リム部ではFe²⁺によるMgの置換が顕著である。淡緑色片状リスウェナイトの肉眼にて緑色が認められる部分では菱苦土石と苦灰石中に50~500 μmの含クロムカオリナイトが脈状に含まれる。濃緑色塊状リスウェナイトでは緑色部はブロック状で,細粒の石英の集合からなり,25 μm程度の含クロム白雲母が含まれる。青緑色塊状リスウェナイトは試料全体が緑色を呈しており,細粒の石英中に5 μm程度の含クロムモンモリロナイトが含まれる。 塊状蛇紋岩はアンチゴライト,菱苦土石,苦灰石,石英を主とし,クロム鉄鉱,輝コバルト鉱,針ニッケル鉱,紅砒ニッケル鉱,ゲルスドルフ鉱を含む。またSEM観察の結果,アンチゴライトの化学組成は鉄を多く含み,0.26-0.31(apfu)となる。苦灰石付近のアンチゴライト短冊状結晶は周縁部が菱苦土石に置換されていた。 塊状蛇紋岩と濃緑色塊状リスウェナイトではクロム鉄鉱が含まれ,共にコアとリムとで組成差を有する。塊状蛇紋岩のクロム鉄鉱のコアではMg = 0.13-0.18,Al = 0.70-0.74,Fe³⁺ = 0.14-0.18(apfu),リムではMg = 0.02-0.03,Al = 0.15-0.26,Fe³⁺ = 0.71-0.78(apfu)となる。濃緑色塊状リスウェナイトのクロム鉄鉱のコアではMg = 0.09-0.29,Al = 0.73-0.79,Fe³⁺ = 0.15-0.23(apfu),リムではMg = 0.02-0.03,Al = 0.15-0.26,Fe³⁺ = 0.63-0.81(apfu)となる。リムはコアと比較するとMgとAlが少なく,Fe³⁺が多い。またリムはコアと比較すると, Ti⁴⁺がわずかに増加する。 浦山川の3タイプのリスウェナイトはCa,CO₂に富む流体との反応によって形成され,蛇紋岩のリスウェナイト化に伴い,Mg,Siに富む流体へと流体の組成が変化したと考えられる。クロムを含む粘土鉱物の種類がいずれも異なり,変質した環境や時期が異なることが考えられる。また濃緑色塊状リスウェナイトと塊状蛇紋岩はいずれもクロム鉄鉱を含み,類似の化学組成と組織を有するため,起源を同じとする蛇紋岩が完全にリスウェナイト化したものとほとんど未変質の蛇紋岩が共に産していると考えられる。
【産状・試料】 中央構造線付近の浦山川には三波川変成帯に属する泥質片岩の剪断帯が分布している。剪断帯中に幅20 cm - 2 m程度の特徴の異なる3タイプの緑色の層状~塊状のリスウェナイトが共に産する。それぞれのリスウェナイトは下流から淡緑色で脆く片状,濃緑色で硬く塊状,青緑色で硬く塊状である (Figure)。いずれも緑色部には数mmの針ニッケル鉱などの硫化鉱物が含まれる。また青緑色の硬く塊状のリスウェナイトに伴って2 m程度の塊状の暗緑色の蛇紋岩が産する。 【実験手法】 観察,分析にはJEOL製走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-6510LV及びRIGAKU製粉末X線回折装置Ultima IVを用いた。
【結果・考察】 分析の結果, 3タイプのリスウェナイトはいずれも石英,菱苦土石,苦灰石を主とし,淡緑色片状リスウェナイトでは菱鉄鉱,含クロムカオリナイト,濃緑色塊状リスウェナイトではクロム鉄鉱,細粒の含クロム白雲母,青緑色塊状リスウェナイトでは菱鉄鉱,細粒の含クロムモンモリロナイトを含む。また,微量の針ニッケル鉱,ゲルスドルフ鉱,黄鉄鉱,輝コバルト鉱,チタン酸化物,ビオラル鉱が含まれる。淡緑色片状リスウェナイトは石英と菱苦土石,苦灰石による脈状の組織,濃緑色塊状リスウェナイトでは苦灰石脈,青緑色塊状リスウェナイトでは菱苦土石と苦灰石からなる炭酸塩脈が石英や菱苦土石を切るような組織が観察された。淡緑色片状リスウェナイト中の菱苦土石はコアとリムとで鉄の含有量に大きく差があり,コアでは0.09-0.12(apfu),リムでは0.40-0.45(apfu)となり,リム部ではFe²⁺によるMgの置換が顕著である。淡緑色片状リスウェナイトの肉眼にて緑色が認められる部分では菱苦土石と苦灰石中に50~500 μmの含クロムカオリナイトが脈状に含まれる。濃緑色塊状リスウェナイトでは緑色部はブロック状で,細粒の石英の集合からなり,25 μm程度の含クロム白雲母が含まれる。青緑色塊状リスウェナイトは試料全体が緑色を呈しており,細粒の石英中に5 μm程度の含クロムモンモリロナイトが含まれる。 塊状蛇紋岩はアンチゴライト,菱苦土石,苦灰石,石英を主とし,クロム鉄鉱,輝コバルト鉱,針ニッケル鉱,紅砒ニッケル鉱,ゲルスドルフ鉱を含む。またSEM観察の結果,アンチゴライトの化学組成は鉄を多く含み,0.26-0.31(apfu)となる。苦灰石付近のアンチゴライト短冊状結晶は周縁部が菱苦土石に置換されていた。 塊状蛇紋岩と濃緑色塊状リスウェナイトではクロム鉄鉱が含まれ,共にコアとリムとで組成差を有する。塊状蛇紋岩のクロム鉄鉱のコアではMg = 0.13-0.18,Al = 0.70-0.74,Fe³⁺ = 0.14-0.18(apfu),リムではMg = 0.02-0.03,Al = 0.15-0.26,Fe³⁺ = 0.71-0.78(apfu)となる。濃緑色塊状リスウェナイトのクロム鉄鉱のコアではMg = 0.09-0.29,Al = 0.73-0.79,Fe³⁺ = 0.15-0.23(apfu),リムではMg = 0.02-0.03,Al = 0.15-0.26,Fe³⁺ = 0.63-0.81(apfu)となる。リムはコアと比較するとMgとAlが少なく,Fe³⁺が多い。またリムはコアと比較すると, Ti⁴⁺がわずかに増加する。 浦山川の3タイプのリスウェナイトはCa,CO₂に富む流体との反応によって形成され,蛇紋岩のリスウェナイト化に伴い,Mg,Siに富む流体へと流体の組成が変化したと考えられる。クロムを含む粘土鉱物の種類がいずれも異なり,変質した環境や時期が異なることが考えられる。また濃緑色塊状リスウェナイトと塊状蛇紋岩はいずれもクロム鉄鉱を含み,類似の化学組成と組織を有するため,起源を同じとする蛇紋岩が完全にリスウェナイト化したものとほとんど未変質の蛇紋岩が共に産していると考えられる。