2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R1: Characterization and description of minerals (Joint Session with The Gemmological Society of Japan)

Thu. Sep 12, 2024 10:00 AM - 12:00 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Masanori Kurosawa, Hiroshi Kitawaki

10:35 AM - 10:50 AM

[R1-03] Clay mineral characterization by Optical Photothermal Induced Resonance (O-PTIR)

「発表賞エントリー」

*Taro Kido1, Yohey Suzuki1 (1. The University of Tokyo)

Keywords:smectite, IR spectroscopy, Raman spectroscopy, X-ray diffraction, SEM-EDS

粘土鉱物の同定で最も有効な分析手法は粉末試料のX線回折法(XRD)である。粘土鉱物の中でも膨潤性に富むスメクタイトは、エチレングリコールで処理することで底角側のピークがシフトすることで同定が可能である。しかし、この方法では岩石中の鉱物から形成した微少量の粘土鉱物を同定する場合にはしばしば問題が発生する。例えば、岩石中で一次鉱物と粘土鉱物の位置関係を明らかにできない問題、また十分な量の試料が得られないと明瞭なピークの取得が困難という問題がある。これらの問題を解決するために、結晶中の結合の情報と元素情報の両方を明らかにできる赤外分光法、特に光熱変換型赤外分光法(O-PTIR)を用いた粘土鉱物の同定を試みた。O-PTIRの原理は、試料に波長を変えられる赤外光レーザーを照射し、試料を赤外光で熱膨張させ、その熱膨張を赤外光レーザーと同軸の可視光レーザープローブで測定する。このように、O-PTIRは通常の赤外分光法と同様のスペクトルが得られる分析手法である。通常の赤外分光法の分析では、透過試料を作成する必要があり、透過しない岩石薄片から赤外スペクトルを得ることは困難であった。一方で、O-PTIRでは試料の上部から非接触・不透過で分析可能なため、岩石薄片に含まれる粘土鉱物の赤外スペクトルを容易に得られることが予想される。粘土鉱物の標準試料を顕微赤外分光法(μFT-IR)とO-PTIRで分析し、O-PTIRで粘土鉱物の赤外スペクトルが得られるか検証した。また、O-PTIRの分析で標準試料から得られたスペクトルと天然試料との比較することで、岩石薄片に含まれる粘土鉱物の位置の特定と同定を実施した。天然試料には東北沖のマントルゼノリスを含むプチスポット火山の玄武岩を対象とし、噴出後の深海底でマントルゼノリスと海水が反応することで形成した粘土鉱物を同定することを目的とした。モンモリロナイトの標準試料(JCSS-3101)のμFT-IRの分析では、910 cm-1、1030 cm-1、1110 cm-1、1640 cm-1のピークが認められ、O-PTIRでも同様のピークが認められた。よって、O-PTIRの分析では粘土鉱物、特にスメクタイトからスペクトルが得られることが確かめられた。当日の発表では、標準試料と天然試料について、μFT-IRとO-PTIRのスペクトルだけでなく、顕微ラマン分光法による分光分析やエネルギー分散型X線分光装置付属の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)による元素分析の結果と比較し、天然試料におけるO-PTIRによる粘土鉱物の同定の可能性や分析対象の拡張性について議論する。