一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

ポスター

R2:結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物

2024年9月14日(土) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R2-P-08] ゲーレナイトー鉄ゲーレナイト系合成メリライトの4配位席における鉄の分布と結晶構造変化

*濵田 麻希1、永嶌 真理子2 (1. 金沢大学、2. 山口大・院創成)

キーワード:合成メリライト、結晶構造変化、ゲーレナイト

メリライト(W2T1T22O7)は結晶学的に独立した二つの4配位席を持ち,そのどちらにも鉄が分布する.本研究ではゲーレナイト(Ca2Al2SiO7: Geh)―鉄ゲーレナイト(Ca2Fe2SiO7: FGeh)系列のメリライトを合成し,4配位席の陽イオン置換に伴う結晶構造変化を検討する.合成メリライトはGeh100,Geh87.5FGeh12.5,Geh75FGeh25,Geh62.5FGeh37.5,Geh50FGeh50(mol%)の5つの出発物質を秤量し,1500-1650℃で加熱し,10℃/minで1200℃まで冷却した.その後,鉄の価数を3価にするために1100℃で24時間以上加熱した.合成メリライトの化学組成はJEOL-JXA8230(山口大学)を用いて決定した. それぞれの平均化学組成は,Ca2.008Al1.969Si1.018O7(Geh100),Ca1.980Al1.757Fe3+0.236Si1.015O7(Geh87.5FGeh12.5),Ca1.966Al1.551Fe3+0.438Si1.025O7(Geh75FGeh25),Ca1.991Al1.937Fe3+1.016Si1.028O7(Geh62.5FGeh37.5),Ca1.990Al1.332Fe3+0.633Si1.031O7(Geh50FGeh50)である.Geh62.5FGeh37.5の組成はメリライトの理想化学組成とは異なるため今回は使用しない.Geh50FGeh50の化学組成は予定していた鉄の分量より少なくFGeh成分が31.7 mol%しかないがメリライトであるので,この組成の合成メリライトとして使用する.合成メリライトの結晶構造はXtaLAB Synergy-R/DW(山口大学)を用いて測定を行い,SHELXL(Sheldrick, 2015)によって精密化した.格子定数はFGeh成分が増加するとともにa軸長は,c軸長とも増加し,FGeh成分が25 mol%を超えると急激に格子定数が大きくなる.さらにFGeh成分が0から31.7 mol%まで増加すると,a軸長は約0.09 Å,c軸長は約0.05 Å増加している.従って4配位席で起こっているAl3+ ⇄ Fe3+陽イオン置換によって, a軸方向がc軸よりも拡張することが判明した.天然に存在するもう一つのメリライト端成分であるオケルマナイトは,4配位席にAlやFe3+が多く配位するとa軸長が減少し,c軸長が増加する,その増加・減少量はともに約0.03 Åである.オケルマナイトとゲーレナイトでは同じ陽イオン置換をしていても構造変化にかなり違いがあることが明らかになった.