10:15 〜 10:30
[R3-02] 分子動力学シミュレーションと放射光X線回折実験によるCO2含有ナトリウムケイ酸塩メルトの構造解析
「発表賞エントリー」
キーワード:ナトリウムケイ酸塩メルト、非晶質構造解析、二酸化炭素
地球内部においてH2OやCO2などの揮発性成分はマントル構成岩石の溶融温度を効率的に下げる性質を持ち, 地球内部でのマグマ生成を引き起こす. そして, マグマ中に溶け込んだ揮発性成分はマグマの輸送特性を支配する密度や粘性などの物理的性質に対しても影響を及ぼすことが知られている. そのため, H2Oを含むケイ酸塩メルトの構造の解明を目指す研究は数多く報告されている。それに対し, CO2を含むケイ酸塩メルトの構造に関する研究はその重要性にも関わらず研究例は限られている. これは長距離秩序を持たない液体構造のモデリングや単純化が困難であること, 高圧力下のCO2含有珪酸塩メルトのその場実験観察が実験的に困難であることなどが原因として考えられる. 特に, 高圧力条件下でCO2が重合度やSiO4ネットワークに与える影響について, 詳細な理解には及んでいない. そこで本研究ではそれらを解明するために, 高温高圧条件下において CO2含有3成分系であるNa2O–SiO2–CO2メルトの構造を古典的分子動力学(MD)シミュレーションとX線回折(XRD)実験を用いることで調べた.
放射光XRD実験は高エネルギー加速器研究機構(KEK)のPF–ARのNE5Cビームラインで行った. 圧力5.4 GPaまでの条件下で, 0.5 wt%のCO2を含むナトリウムケイ酸塩メルト(Na2O–2SiO2 (disilicate), Na2O–3SiO2 (trisilicate))の構造をエネルギー分散X線回折法により測定した. 得られたX線散乱パターンをMCEDXを用いて構造因子S(Q)に規格化し,フーリエ変換して二体分布関数g(r)を得た. MDシミュレーションは, ケイ酸塩液体中のCO2の反応 [CO2+O2–(ケイ酸塩メルト) ↔ CO32–]を記述する経験的な二体ポテンシャル[4]を用いて, 60–700個のCO2分子を含む約30000粒子の系において, NPTアンサンブルを用いて実施した. 計算は分子動力学シミュレータのLAMMPSを使用した.
XRD実験から, CO2含有によりDisilicateでは第一回折ピーク(FSDP)が高Q側にシフトしたのに対し, Trisilicateでは低Q側にシフトしていることが明らかになった. MDシミュレーションからは, ケイ酸塩メルトにおいてCO2分子とCO32-イオンの生成が確認され, 高圧になるほどCO2分子に対してCO32–イオンの割合が増加する傾向が見られた. 当日は, カチオンの周りのOの配位数やQn分布など, メルトの三次元ネットワーク構造にCO2がどのように影響するかについて定量的に議論する.
放射光XRD実験は高エネルギー加速器研究機構(KEK)のPF–ARのNE5Cビームラインで行った. 圧力5.4 GPaまでの条件下で, 0.5 wt%のCO2を含むナトリウムケイ酸塩メルト(Na2O–2SiO2 (disilicate), Na2O–3SiO2 (trisilicate))の構造をエネルギー分散X線回折法により測定した. 得られたX線散乱パターンをMCEDXを用いて構造因子S(Q)に規格化し,フーリエ変換して二体分布関数g(r)を得た. MDシミュレーションは, ケイ酸塩液体中のCO2の反応 [CO2+O2–(ケイ酸塩メルト) ↔ CO32–]を記述する経験的な二体ポテンシャル[4]を用いて, 60–700個のCO2分子を含む約30000粒子の系において, NPTアンサンブルを用いて実施した. 計算は分子動力学シミュレータのLAMMPSを使用した.
XRD実験から, CO2含有によりDisilicateでは第一回折ピーク(FSDP)が高Q側にシフトしたのに対し, Trisilicateでは低Q側にシフトしていることが明らかになった. MDシミュレーションからは, ケイ酸塩メルトにおいてCO2分子とCO32-イオンの生成が確認され, 高圧になるほどCO2分子に対してCO32–イオンの割合が増加する傾向が見られた. 当日は, カチオンの周りのOの配位数やQn分布など, メルトの三次元ネットワーク構造にCO2がどのように影響するかについて定量的に議論する.