一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R3:高圧科学・地球深部

2024年9月12日(木) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R3-P-03] 含水ブリッジマナイトにおける偏光赤外スペクトルと水素位置の第一原理計算

*稲垣 喜久代1、土屋 旬1、Zhang Yanyao3、Lin Jung-Fu2、唐戸 俊一郎4、Kung Jennifer5、Li ChingChien5 (1. 愛媛大・GRC、2. テキサス大学、3. スタンフォード大学、4. イェール大学、5. 国立成功大学)

キーワード:ブリッジマナイト、水素、第一原理計算

水素を不純物として含む名目上無水鉱物(NAMs)は、地球内部における水の主要な形態である。NAMs中の水は、融解関係(Inoue,1994)、レオロジー特性(Karato & Jung,2023)、電気伝導度 (Karato & Wang,2013)など様々な物性に影響を与える。そのため、NAMsの構造や物性を解明することは、地球の進化やダイナミクスを理解する上で重要である。マントル遷移層の主要鉱物であるウォズリアイトやリングウッダイトの結晶構造中には最大2-3wt%の水を保持できる(Inoue et al.1995 ; Kohlstedt et al. 1996)。しかしながら、下部マントルに最も多く存在するブリッジマナイトの水の状態については未解明である。
本研究の目的は、最近報告された含水ブリッジマナイトのフーリエ変換赤外分光法(FTIR)の結果(Fu et al. 2019)について第一原理計算で説明できる構造モデルを確立し、ブリッジマナイト中の水素の存在状態について明らかにすることである。      
本研究では、密度汎関数法に基づく第一原理計算を用いて、含水ブリッジマナイトの構造を計算した。交換相関汎関数にはPerdew-Burke-Ernzerhof形式の一般化勾配近似(GGA-PBE, Perdew et al. 1996)を用い、Si, Al, O, Hにはノルム保存擬ポテンシャルを用いた(Troullier and Martins 1991)。Mgの擬ポテンシャルはvon Barth-Carの方法で生成した(Karki et al.2000)。これらの擬ポテンシャルは、含水鉱物やNAMsの計算で広く検証されている(Tsuchiya and Tsuchiya 2009など)。電子波動関数は、80 Ryの運動エネルギーカットオフを用いて平面波で展開した。計算に用いた構造は、MgSiO3ブリッジマナイトの単位胞を2×2×1とし、Mg原子の空孔に2個の水素原子(81原子)、Si原子を4個の水素原子(83原子)、SiをAl+H(81原子と83原子)で置換したスーパーセルである。ブリルアン・ゾーンのサンプリングは、スーパーセルに対して2×2×4のMonkhorst-Packメッシュで行った(Monkhorst and Pack 1976)。構造最適化はすべての構造パラメータを0 Kの静的条件で残留力が1.0×10-5 Ry/au以下になるまで行った。さらにそれらの構造に対し、密度汎関数摂動理論(DFPT) (Baroni et al., 2001)を用いてΓ点におけるフォノン周波数を計算した。
 本発表では、上記の計算から含水ブリッジマナイトの構造中における安定な水素位置とその振動特性について議論する。