2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

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R4: Mineral sciences of the Earth surface

Fri. Sep 13, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R4-P-05] Impact of evaporation on CO2 mineralization during enhanced rock weathering

*Naoki NISHIYAMA1, Masao SORAI1, Keisuke FUKUSHI2, Yuto NISHIKI1 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), 2. Kanazawa University)

Keywords:Enhanced rock weathering, CO2 mineralization, Evaporation, Mafic rock, Dissolution

地球温暖化対策として注目される岩石風化促進法は、粉砕した苦鉄質・超苦鉄質岩を土壌や農耕地に噴霧し、人工的に風化を促進して大気CO2を除去する技術である。CO2の除去メカニズムの一つは、雨水に暴露された苦鉄質岩等から溶出したCa2+やMg2+イオンが、炭酸塩鉱物として沈殿することである。しかしながら、ケイ酸塩鉱物の溶解は一般に遅く、炭酸塩鉱物に対して過飽和状態になりにくいという問題がある。一方、モンゴル等の乾燥地域に見られるアルカリ塩湖では、蒸発により溶存イオンが濃縮され、カルシウムやマグネシウム炭酸塩が形成されることが知られている[1, 2]。本研究はこの点に着目し、苦鉄質等を溶解させた水を蒸発・濃縮させることで、どのような蒸発沈殿物が形成されるか、またどの程度濃縮することでCO2の鉱物固定が可能かを検証した。
試料には、玄武岩(秋田県)と橄欖岩(北海道)を用いた。さらに、溶解が速くカルシウムを豊富に含む灰長石(東京都)も試料として採用した。各試料を粒径<105 μmに粉砕後、粉末5 gを超純水500 mLに加え、7–14日間撹拌しながら溶解させた。その後、減圧濾過によって固液分離し、蒸発実験用の溶液を回収した。これらの岩石溶解水を約20 cm × 20 cmのトレーに入れ、温度約20℃の条件下で蒸発させた。蒸発を加速するために、送風機を用いて溶液上部に空気を流した。トレーの質量は定期的に測定し、溶液の濃縮率(=[蒸発前の溶液の質量]/[ある時間蒸発させた溶液の質量])を計算した。溶液は適宜採取し、蒸発に伴うpHと溶存イオン濃度の変化を評価した。蒸発過程で形成された沈殿物は室温下で風乾させた後、エネルギー分散型X線分光器付きの走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)を用いて形態観察と化学組成分析を行った。比較のため、玄武岩粉末を固液比1:50で超純水中で撹拌しながら約30日間溶解させ、蒸発のない条件において炭酸塩鉱物が形成されるかを検証した。
各岩石の溶解水を蒸発させると、pHは7.6–7.8から最大9.2まで上昇した。いずれの溶解水についても、濃縮率約10までは濃縮率に比例して各イオン濃度は増加した。一方、濃縮率が約10を超えるとCa濃度は比例関係から逸脱しはじめ、カルシウムを含む沈殿物が生じ始めたことが示唆された。橄欖岩の溶解水については、濃縮率約40以上からMg濃度も減少しはじめ、マグネシウムを含む蒸発沈殿物が形成されたことが示唆された。蒸発沈殿物のSEM-EDS分析から、モノハイドロカルサイトやアラゴナイトの形態に類似したカルシウム炭酸塩の形成が認められた。また、橄欖岩の溶解水については、ネスケホナイト(MgCO3・3H2O)の形態に類似した蒸発沈殿物も確認された。飽和指数を計算したところ、いずれの溶解水も蒸発前は各種カルシウム炭酸塩に対して未飽和であったが、濃縮率約10を超えるとカルサイトやモノハイドロカルサイトに対して過飽和となっていた。物質収支計算から、灰長石の溶解水を濃縮率100まで蒸発させた場合、溶存Caの93 %が炭酸塩として沈殿したことが示唆された。一方で、蒸発のない条件で玄武岩を溶解させた場合、溶液は常に各種カルシウム・マグネシウム炭酸塩に対して未飽和であった。以上より、苦鉄質および超苦鉄質岩の溶解水を約10倍に濃縮することで炭酸塩の沈殿が開始し、約100倍まで濃縮することで溶存Caの大部分を大気CO2の鉱物固定に利用できることが示された。

引用文献
[1] Fukushi, K., Imai, E., Sekine, Y., Kitajima, T., Gankhurel, B., Davaasuren, D., & Hasebe, N. (2020) Minerals, 10, 669. doi:10.3390/min10080669
[2] Raudsepp, M.J., Wilson, S., Zeyen, N., Arizaleta, M.L., & Power, I.M. (2024) Chem. Geol., 648, 121951. doi:10.1016/j.chemgeo.2024.121951