一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

口頭講演

R6:深成岩・火山岩及び サブダクションファクトリー

2024年9月14日(土) 09:00 〜 12:00 ESホール (東山キャンパス)

座長:川本 竜彦(静岡大学)、湯口 貴史(熊本大学)、亀井 淳志(島根大学)

10:00 〜 10:15

[R6-05] 山口県西部・鳳翩山地域の花崗岩類のジルコンU-Pb年代

*堤 之恭1、谷 健一郎1 (1. 国立科学博物館)

キーワード:西南日本、山陽帯、白亜紀、花崗岩類、ジルコンU-Pb年代

白亜紀から古第三紀は,東アジアの火成活動が活発な時期であった.その痕跡は西南日本内帯に花崗岩類として残されており,北から山陰帯,山陽帯,領家帯の3つの花崗岩区に分けられる(石原, 1973; 金谷・石原, 1973).伝統的年代の解釈によると,これらの年代は西に向かって古くなる傾向があり,白亜紀に海嶺の沈み込みが西から東に移動した結果と考えられた(Nakajima, 1994).一方で,中国地方東部の花崗岩類のジルコン年代は,海洋側に向かって古くなる傾向が見えている(Iida et al., 2015).また,中部―北部九州の白亜紀花崗岩のジルコン年代は,中心から大陸側と海洋側双方に向かって古くなる傾向があり,これらはそれぞれ朝鮮半島西部および中国・四国地方に対応し,九州は双方の特徴を併せ持つ「端」と解釈された(堤・谷, 2023).
 中国地方東部と九州の花崗岩類のジルコン年代は豊富であるが,その間に位置する山口県・広島県の,特に山陽帯のジルコン年代はまだ報告が少ない.東アジアにおける白亜紀火成活動を検証する上で,この空白を埋めることは重要である.その第一歩として,本研究では鳳翩山地域の花崗岩類のジルコンU-Pb年代の測定を行った.鳳翩山岩体は中心部が花崗岩,周縁部が花崗閃緑岩からなり(松浦ほか, 2007),山陽帯に位置するが,磁鉄鉱系列の組成を持つものもある(石原ほか, 1979).Rb-Sr全岩年代は102 Maを示し(Shibata &Ishihara, 1979),これは西南日本の白亜紀花崗岩が「西に向かって古くなる説」の根拠の一つでもあった.
 鳳翩山岩体の花崗閃緑岩試料4点は95.4 ± 0.7 Ma,96.3 ± 1.0 Ma,96.3 ± 0.8 Ma,および96.2 ± 0.6 Maを,花崗岩試料2点は93.9 ± 0.7 Maおよび90.2 ± 0.8 Maを,近傍の矢櫃山の花崗閃緑斑岩試料1点は97.1 ± 0.7 Maを示した.各々の誤差は95%信頼区間を示す.これらの年代は,北部九州の香春岩体・嘉穂岩体および早良岩体に対応する(堤・谷, 2022)一方,中国地方東部に93 Maを超える花崗岩類のジルコン年代の報告はない(Iida et al., 2015).西南日本の花崗岩の東西連続性の検証には,さらなるデータ蓄積が必要である.

Iida et al. (2015) Island Arc 24, 205-220.; 石原 (1973) 鉱山地質 23, 1332.; 石原ほか (1979) 地雑 85, 47-50.; 金谷・石原 (1973) 岩鉱 68, 211-224.; 松浦ほか (2007) 20万分の1図幅.; Nakajima (1994) Lithos 33, 51-66.; Shibata & Ishihara, (1979) Geochemical J. 13, 113-119.; 堤・谷 (2022) 地質学会要旨 129, T6-O-5.; 堤・谷 (2023) 地質学会要旨 130, S1-O-2.