5:00 PM - 5:15 PM
[R8-07] Comparison and verification study of new sample forms for use in Raman carbonaceous material geothermometer
「発表賞エントリー」
Keywords:Carbonaceous material, Raman spectroscopy, Raman CM geothermometer, Mudstone, Pelitic schist
ラマン分光法を用いて炭質物の結晶化度を評価し,岩石が経験した最高被熱温度を推定する炭質物ラマン温度計は,岩石薄片内において透明なホスト鉱物に内包されている炭質物が測定対象とされてきた(Beyssac et al., 2002;Aoya et al., 2010;Kouketsu et al., 2014).これは,炭質物の薄片作成時の研磨によるダメージや測定時のレーザー加熱による損傷を避けるためである(Nakamura et al., 2019;Kouketsu et al., 2019).しかし,岩石試料によっては脆い試料や試料の量が少いことがあるため,薄片にするのが難しい場合がある.本研究では,新しい試料形態として岩石切断面,岩石破断面およびフッ酸処理を行った試料に対し,レーザー照射の影響を評価することで, 炭質物ラマン温度計に適応可能な試料形態が拡大可能か検証した.
先行研究において, 高結晶化度の炭質物(=石墨)におけるレーザー照射の影響は評価されているが(Kagi et al., 1994;Niwase, 1995),低結晶化度の炭質物へのレーザー照射の影響は十分に評価されていない.そこで,本研究では中生界の泥岩と泥質片岩を分析対象とした.各試料に対してレーザー強度を変えてラマン分光測定を行った結果,レーザー強度が3.0 mW以上でラマンスペクトルの形状に変化が見られ,炭質物ラマン温度計の温度推定に影響与える可能性があることが分かった.次に, (1) 岩石薄片, (2) 岩石切断面,(3) 岩石破断面,(4) 研磨面, および (5) フッ酸処理で分離した炭質物ラマンスペクトルの比較検証を行い,炭質物ラマン温度計を用いた場合の推定続成・変成温度値に与える影響の評価を行った.その結果, 内包された炭質物を対象とした従来の測定方法で得られた炭質物ラマン温度計の続成・変成温度が,300 ℃より低い試料では(1)岩石薄片と(2) 岩石切断面, (3) 岩石破断面の炭質物ラマン温度計の推定温度に大きな差が見られなかった.それに対して, (5) フッ酸処理で分離した炭質物では, 試料によって(1)岩石薄片との推定温度の差が大きかった.また, 炭質物ラマン温度計の続成・変成温度が,300 ℃より高い試料では, 試料形態によって推定温度がばらついていた.本発表では, 炭質物ラマン温度計に適応可能な試料形態を検証するとともに, 炭質物ラマン温度計の続成・変成温度が,300 ℃より高い試料において試料形態によって推定温度がばらついた原因について考察を行う.
引用文献 Aoya et al. (2010) J. Metamorp. Geol., 28, 895–914/Beyssac et al. (2002) J. Metamorph. Geol., 20, 858–871/Kagi et al. (1994) Geochim. Cosmochim. Acta, 58, 3527–3530/Kouketsu et al. (2014) Isl. Arc, 52, 33–50/Kouketsu et al. (2019) Prog. Earth Planet. Sci., 6:23/Nakamura et al. (2019) Isl. Arc, 28, e12318/Niwase (1995) Phys. Rev. B, 23, 15785–15798.
先行研究において, 高結晶化度の炭質物(=石墨)におけるレーザー照射の影響は評価されているが(Kagi et al., 1994;Niwase, 1995),低結晶化度の炭質物へのレーザー照射の影響は十分に評価されていない.そこで,本研究では中生界の泥岩と泥質片岩を分析対象とした.各試料に対してレーザー強度を変えてラマン分光測定を行った結果,レーザー強度が3.0 mW以上でラマンスペクトルの形状に変化が見られ,炭質物ラマン温度計の温度推定に影響与える可能性があることが分かった.次に, (1) 岩石薄片, (2) 岩石切断面,(3) 岩石破断面,(4) 研磨面, および (5) フッ酸処理で分離した炭質物ラマンスペクトルの比較検証を行い,炭質物ラマン温度計を用いた場合の推定続成・変成温度値に与える影響の評価を行った.その結果, 内包された炭質物を対象とした従来の測定方法で得られた炭質物ラマン温度計の続成・変成温度が,300 ℃より低い試料では(1)岩石薄片と(2) 岩石切断面, (3) 岩石破断面の炭質物ラマン温度計の推定温度に大きな差が見られなかった.それに対して, (5) フッ酸処理で分離した炭質物では, 試料によって(1)岩石薄片との推定温度の差が大きかった.また, 炭質物ラマン温度計の続成・変成温度が,300 ℃より高い試料では, 試料形態によって推定温度がばらついていた.本発表では, 炭質物ラマン温度計に適応可能な試料形態を検証するとともに, 炭質物ラマン温度計の続成・変成温度が,300 ℃より高い試料において試料形態によって推定温度がばらついた原因について考察を行う.
引用文献 Aoya et al. (2010) J. Metamorp. Geol., 28, 895–914/Beyssac et al. (2002) J. Metamorph. Geol., 20, 858–871/Kagi et al. (1994) Geochim. Cosmochim. Acta, 58, 3527–3530/Kouketsu et al. (2014) Isl. Arc, 52, 33–50/Kouketsu et al. (2019) Prog. Earth Planet. Sci., 6:23/Nakamura et al. (2019) Isl. Arc, 28, e12318/Niwase (1995) Phys. Rev. B, 23, 15785–15798.