2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R8: Metamorphic rocks and tectonics

Thu. Sep 12, 2024 3:30 PM - 6:00 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Yui Kouketsu(Nagoya University), Shunsuke Endo

4:45 PM - 5:00 PM

[R8-06] Observations of geological structures and microstructures associated with strain release at a continental plate boundary fault

「発表賞エントリー」

*Haruki Yoshiasa1, Jun-ichi Ando1,2, Kaushik Das1,2, Dyuti Prakash Sarkar3 (1. Hiroshima University, 2. HiPeR, 3. JAMSTEC)

Keywords:Bedding plane slip, MBT, Microstructure, Frictional heat, Dynamic recrystallization

はじめに:インド亜大陸は現在も約〜15 mm/yearの速度で北上を続けており、それに伴いヒマラヤ地域では地震が発生している。Bilham(2019)は、ヒマラヤ地域の沈み込みに伴って蓄積された歪と、地震によって解放された歪を計算した。その結果、蓄積された歪は地震によって完全には解放されておらず、今後Mw=8.6レベルの地震が1回、あるいは2回発生する可能性があると結論づけている。しかし、蓄積された歪の解消が地震だけによるものかどうかを考えるためには、プレート収束境界域の地質現象を理解する必要がある。ヒマラヤ地域には、インド亜大陸の衝突に伴い3つの主要なプレート収束境界断層(主前縁衝上断層(MFT)・主境界衝上断層(MBT)・主中央衝上断層(MCT))が形成されている。現在の収束を重荷になっているのはMFTであるが、MBTとMCT沿いには地球内部のプレート収束にともなう構造を有した地層が地表に露出している。本研究では、脆性変形領域における地質現象を把握するために、MBTを対象として地質調査および岩石の微細組織の観察を行った。
研究対象:インド ヒマチャル プラデシュ州サバスー市に露出するMBTの上盤、約1 Kmの範囲を調査した。地表に露出するMBTは、約10 Maから約0.5 Maの期間に活動したプレート収束境界断層であり、地下260℃の温度で変形した岩石が露出する(Sarkar et al., 2021)。MBTの上盤には、先カンブリア時代の砂岩層が主に分布する。砂岩単層の層厚は約5 cm-30 cmである。また泥岩層(単層の層厚約2 ㎝)との互層も確認できる。
結果と考察:地質調査の結果、以下のことが明らかとなった。1)調査地域の全域で、多数の層面すべりが確認された。層面すべりのすべ面上には、条線が発達し、条線に沿って微細な石英脈が認められる。また、層面すべりに関連して、層理面に平行なデュープレックス構造やキンクバンドが顕著に発達する。しかし、調査地域では、層面すべりを引き起こすようなフレクシャー褶曲は存在しない。2)キンクバンドから求めた主圧縮軸方向と条線から求めたすべり方向は、MBTの傾斜方向にほぼ平行なものが多い。1)と2)の結果は、MBTの上盤では、プレートの沈み込みに伴い層面すべりが卓越することを強く示唆する。 層面すべりを受けた砂岩の微細組織観察からは以下のことが明らかとなった。3)層面すべりの多くは、砂岩単層内部に層理面に平行に発達した層厚10 μm -1 mmの複数の剪断面に沿って発達する。4)この各剪断面は小歪から大歪の状態を記録している。小歪から大歪に至る微細組織の特徴は、砂岩層を構成する基質支持の粒径50 μm –100 μmの石英が、剪断に伴ってその間隔を広げて行くことである。間隔を広げながら石英は流体と反応し細粒化が進み、反応によって白雲母が晶出する。晶出した白雲母は(100)が剪断面に平行に配列する。大歪になると、粒径が数mmの白雲母のみから構成されるようになり、顕著なリーデル剪断面が発達する。5)剪断帯の内部には、剪断方向に伸長する粒径数100 μmの波動消光を示す石英が存在し、この様な石英から石英脈が発生している。すなわち石英脈は、砂岩を構成する石英粒子が剪断による摩擦熱によって塑性変形し形成されたことが強く示唆される。この石英脈は、野外において確認できた条線に沿って発達する石英脈であると考えられる。6)石英脈のc軸は、剪断方向に垂直に集中するタイプと剪断方向に集中するタイプがある。それぞれbasalすべりとprism<c>すべりによる転位クリープで形成されたと考えられる。basalすべりは300~400℃で、prism<c>すべりは550℃以上で卓越することが知られている。石英脈中の動的再結晶を受けた石英の粒径(約5 μm)から、再結晶粒径による地質差応力計を用いて差応力を見積もることがでる。その結果は190 MPaとなる。c軸ファブリックから求めた温度と地質差応力計から求めた差応力値から石英脈形成時の歪速度を推定すると10-10~10-13 /sと10-5~10-7 /sとなる。この値は、プレートの沈み込みに際して生じる層面すべりの歪速度と考えられる。本研究は、プレートの沈み込みを起因として生じる歪の一部は、層面すべりの運動、そしてすべりによる摩擦発熱によって開放されている可能性が強いことを示唆する。現在、炭質物ラマン温度計を用いてすべり面とその周辺での温度をより正確に推定するために分析中である。それらを元に、本講演ではすべり面での温度上昇についても議論する予定である。