2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

S2: Water Rock Interaction (Special Session)

Fri. Sep 13, 2024 9:00 AM - 12:00 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Noriyoshi Tsuchiya

9:50 AM - 10:05 AM

[S2-03] Petrogenesis and significance of ophicarbonate in the Kanasaki serpentinite body (Kanto Mountains, Central Japan)

*Ryosuke OYANAGI1,2, Hikaru Sawada3,2, Qing Chang2, Madhusoodhan Satish-Kumar4 (1. Kokushikan Univ., 2. JAMSTEC, 3. Toyama Univ., 4. Niigata Univ.)

Keywords:Serpentine, Ophicarbonate, Carbon cycle

地球では大気・海洋・地球内部で炭素が循環することにより、大気中の二酸化炭素量がうまく調節され、ハビタブルな環境が維持されてきた(e.g., Plank and Manning, 2019, Nature)。しかし、地球内部における炭素循環の全容はつかめていない。超塩基性岩は、地質学的に速い速度で炭素を含む流体と反応することが知られており(Beinlich et al. 2020, Nat. Geo)、多くの炭素を炭酸塩鉱物として貯蔵できるポテンシャルを有している。そのため、どのようなテクトニックセッティングにおいて、どのような流体と反応することで超塩基性岩が炭素を貯蔵するのか、その多様性を明らかにすることが重要だと考えられる。
 本研究では、沈み込み帯における超塩基性岩の炭酸化過程をより理解するために、岩石学的および地球化学的分析を用いて、日本の関東山地の金崎地域に産する蛇灰岩(炭酸塩鉱物と蛇紋石で構成されている岩石)の成因を議論する。金崎地域では、みかぶユニットの塩基性岩や泥質片岩、超塩基性岩が露出している。蛇紋岩や蛇灰岩は泥質片岩に囲まれたブロックとして存在している。蛇紋石はメッシュ組織を示し、メッシュコアはリザーダイトもしくはクリソタイルが、メッシュリムにはアンチゴライトが存在する。蛇灰岩は4つの産状を示した。(タイプI)角礫化した蛇紋岩の間を充填する方解石、 (タイプII) 角礫化した蛇紋岩の間を充填する方解石+ドロマイト、(タイプIII)直線状の方解石脈、 (タイプIV) 直線状の方解石+ドロマイト脈である。直線状の炭酸塩脈は、炭酸塩セメントを含む蛇灰岩マトリックスを切っている。
 タイプII―IVの炭酸塩鉱物は、13Cに乏しく(δ13C(VPDB) = -6 - -8‰)、幅広いδ18O(VSMOW)値を示す(13 – 22‰)。また、これらの炭酸塩鉱物は、Euの正の異常を示すREEパターンを示す。一方で、タイプIの炭酸塩鉱物は、13Cに富み(δ13C(VPDB) = -2 - +2‰)、比較的狭いδ18O値を示す(13 – 16‰)。タイプIの炭酸塩鉱物は多様なREEパターンを示した。負のCeの異常とYの正の異常を示しHREEに富むパターンや、Euの正の異常とややLREEに富むパターン、それらの中間のパターンが観察された。以上のような、蛇灰岩に含まれる炭酸塩鉱物の産状や地化学的特徴の違いは、超塩基性岩の炭酸塩化作用が多様な流体によって引き起こされ、多様なテクトニックセッティングで起きたことを示唆している。講演では、炭酸塩化作用を引き起こした流体や炭酸塩化作用のテクトニックセッティングをもとに、地球規模炭素循環における超塩基性岩の役割について考察を行う。