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[S3-10] マントルリソスフェアの形成とカンラン石レオロジーの変遷
キーワード:カンラン石、マントル
2016年から2018年にかけて実施された国際陸上掘削計画(ICDP)オマーン掘削プロジェクト(OmanDP)は、オマーン王国に露出するSamailオフィオライトWadi Tayin岩体に対して上部地殻〜マントルセクション〜オフィオライト岩体底部までそれぞれ300m〜400m掘削することに成功した[1, 2]。本研究では、マントルセクションを掘削したBAサイトのうちBA3Aコアの蛇紋岩掘削コア試料が保存するカンラン石の結晶方位ファブリックに特徴を明らかにすることを目的とした。
BA3Aコアの大部分は蛇紋岩化したハルツバージャイトで構成される[1–3]。主な初生鉱物はカンラン石、直方輝石、単斜輝石、スピネルである。二次鉱物として蛇紋石、磁鉄鉱、角閃石、炭酸塩鉱物が観察された。本研究では、BA3Aコアから蛇紋岩化度が平均よりやや低い部分から岩石試料を採取し、薄片を掘削コアの半割面について鉛直方向が長辺と平行になるように作成した。各研磨薄片の鉱物相と結晶方位はSEM-EBSDを用いて分析した。そして、EBSDマップを基にしてマントルファブリックであるカンラン石の結晶方位ファブリックを解析した。
結果として、蛇紋岩から復元したBA3Aコアのカンラン岩の微細組織は主にポーフィロクラスト状組織であり、地殻―マントル境界とほぼ平行な面構造を示すことが明らかとなった。さらにカンラン石の結晶方位ファブリックは、高温のアセノスフェアマントルに典型的なA〜AGタイプ[4–8]ではなく、Samailオフィオライトの比較的低温の延性剪断帯に典型的なA〜Dタイプのファブリック[6, 9]で特徴づけられることがわかった。しかし、BA3A コアは、高温マントルの粗粒組織と同様に、地殻-マントル境界に平行な水平な面構造を保持した状態で低温側のポーフィロクラスト状組織に変化していることから、BA3Aコアに保存されているるカンラン石の結晶方位ファブリックが、高温から徐々に低温になり、マントルがリソスフェアとして固結するまでの連続的なマントル変形の過程で変化した可能性を示唆する。
[1] Kelemen, P. B. et al., 2020a. Methods and explanatory notes. In Kelemen, P. B. et al., Proceedings of the Oman Drilling Project: College Station, TX (International Ocean Discovery Program). https://doi.org/OmanDP.proc.2020
[2] Kelemen, P. B. et al., 2020b. Site BA3. In Kelemen, P. B. et al., Proceedings of the Oman Drilling Project: College Station, TX (International Ocean Discovery Program). https://doi.org/OmanDP.proc.117.2020
[3] Kelemen, P. B. et al., 2021. Jour. Geophys. Res.: Solid Earth, 126, e2021JB022729.
[4] Ismail, W. B., Mainprice, D., 1998. Tectonophysics, 296, 145–157.
[5] Dijkstra, A. et al., 2002. Jour. Geophys. Res., 107, 2270.
[6] Michibayashi, K. and Mainprice, D., 2004. Jour. Petrol., 45, 405-414.
[7] Tommasi, A., Vauchez, A., 2015. Tectonophysics, 661, 11–37.
[8] Michibayashi, K. et al., 2016. Earth Planet. Sci. Lett., 443, 70-80.
[9] Michibayashi, K. et al., 2006. Earth Planet. Sci. Lett., 244, 695-708.
BA3Aコアの大部分は蛇紋岩化したハルツバージャイトで構成される[1–3]。主な初生鉱物はカンラン石、直方輝石、単斜輝石、スピネルである。二次鉱物として蛇紋石、磁鉄鉱、角閃石、炭酸塩鉱物が観察された。本研究では、BA3Aコアから蛇紋岩化度が平均よりやや低い部分から岩石試料を採取し、薄片を掘削コアの半割面について鉛直方向が長辺と平行になるように作成した。各研磨薄片の鉱物相と結晶方位はSEM-EBSDを用いて分析した。そして、EBSDマップを基にしてマントルファブリックであるカンラン石の結晶方位ファブリックを解析した。
結果として、蛇紋岩から復元したBA3Aコアのカンラン岩の微細組織は主にポーフィロクラスト状組織であり、地殻―マントル境界とほぼ平行な面構造を示すことが明らかとなった。さらにカンラン石の結晶方位ファブリックは、高温のアセノスフェアマントルに典型的なA〜AGタイプ[4–8]ではなく、Samailオフィオライトの比較的低温の延性剪断帯に典型的なA〜Dタイプのファブリック[6, 9]で特徴づけられることがわかった。しかし、BA3A コアは、高温マントルの粗粒組織と同様に、地殻-マントル境界に平行な水平な面構造を保持した状態で低温側のポーフィロクラスト状組織に変化していることから、BA3Aコアに保存されているるカンラン石の結晶方位ファブリックが、高温から徐々に低温になり、マントルがリソスフェアとして固結するまでの連続的なマントル変形の過程で変化した可能性を示唆する。
[1] Kelemen, P. B. et al., 2020a. Methods and explanatory notes. In Kelemen, P. B. et al., Proceedings of the Oman Drilling Project: College Station, TX (International Ocean Discovery Program). https://doi.org/OmanDP.proc.2020
[2] Kelemen, P. B. et al., 2020b. Site BA3. In Kelemen, P. B. et al., Proceedings of the Oman Drilling Project: College Station, TX (International Ocean Discovery Program). https://doi.org/OmanDP.proc.117.2020
[3] Kelemen, P. B. et al., 2021. Jour. Geophys. Res.: Solid Earth, 126, e2021JB022729.
[4] Ismail, W. B., Mainprice, D., 1998. Tectonophysics, 296, 145–157.
[5] Dijkstra, A. et al., 2002. Jour. Geophys. Res., 107, 2270.
[6] Michibayashi, K. and Mainprice, D., 2004. Jour. Petrol., 45, 405-414.
[7] Tommasi, A., Vauchez, A., 2015. Tectonophysics, 661, 11–37.
[8] Michibayashi, K. et al., 2016. Earth Planet. Sci. Lett., 443, 70-80.
[9] Michibayashi, K. et al., 2006. Earth Planet. Sci. Lett., 244, 695-708.