9:15 AM - 9:30 AM
[S3-11] Three-dimensional location analysis on acoustic emissions and faults in olivine under pressure-temperature conditions of subducting slabs
Keywords:Olivine, Acoustic emission, Fault, Intermediate earthquake
沈み込むプレート内の深さ40 km以深でのスラブ内地震(稍深発及び深発地震)の発生メカニズムは、未だ大きな謎に包まれている。封圧下における岩石の破壊強度は「差応力>封圧の条件を満たす場合にのみ破壊が起きうる」ことを意味するGoetze基準にて規定される。地球のリソスフェアマントルの差応力の上限はおおむね0.3GPa程度であるため、封圧が1GPa以上となる上部マントル以深では脆性破壊や摩擦すべりは困難であるはずにもかかわらず、実際には沈み込むスラブ内部では地震が多発している。そのようなパラドックスを説明するため、含水鉱物の脱水分解による「脱水不安定」モデル(Raleigh & Paterson, 1965)や「転移断層」モデル(Green & Burnley, 1989)、「断熱不安定」モデル(Kelemen & Hirth, 2007)などの、高圧環境下に特有の種々の仮説が提案されてきた。これらの仮説を検証することを目的とした実験が数多くなされてきており、特にこの10年では、高温高圧下における一軸圧縮試験と放射光“その場観察”法及びアコーステック・エミッション(AE)測定法を組み合わせた実験手法(Schubnel et al., 2013)が行われるようになり、応力、歪、AE発生頻度の時間変遷の複合評価が可能となった。しかし、破壊が進行するタイムスケールは秒単位であることや断層の不安定すべり時の応力降下のタイムスケールはミリ秒単位であること(例えばOkazaki & Katayama, 2015)を勘案すると、放射光“その場観察”によって破壊の素過程に迫るのは容易ではない。例えば、現在SPring-8のBL04B1に常設されているCCD検出器と60keVの単色X線の組み合わせでは、差応力測定に耐えうるクオリティーの2次元X線回折パターンを得るのに300秒程度の露光時間を要する。
そこで本研究では、SPring-8のBL05XUビームラインに小型D-DIA型変形装置及びシンチレーションレスの2次元半導体検出器(WidePix 5x5、Advacam社製)をはじめとした光学系を仮設し、スラブ内浅部の温度圧力条件下(500-900℃、2-3 GPa)におけるカンラン石多結晶体の一軸圧縮試験を行った。MA6-6型加圧方式(2段目アンビル先端7mm)を採用し、試料の一軸圧縮は一定のD-ramストローク速度にて行った。高エネルギーアンジュレーター光源から供給されるピンクビーム(約100keV)を試料に入射し、2次元X線回折パターン及びラジオグラフを交互に撮影することにより(露光時間はいずれも0.4秒)、試料の被る応力及び歪を測定した。2段目アンビルの背面には計6個の圧電素子を貼り付け、それぞれの圧電素子にて試料から放出されるAEを測定した。AE波形(P波)の初動時刻より、AEの震源位置を決定した。回収試料中に発達した断層の空間分布状態は、SPring-8のBL20B2にてX線マイクロトモグラフィー法を用いて観察した。
いずれの条件でも、2GPaを超える差応力にて降伏が起き、その後に“見かけの”定常的な流動とそれに伴うAE発生が継続した。塑性変形がより卓越するであろう、高温側の800-900℃ではより多くのAEが発生した一方で(数百件程度)、低温側のAE発生件数は高温側の半数程度にとどまった。歪が10%を超える領域では、応力一定にて歪速度が1.5-2倍となる軟化が起き、それに合わせてAEの発生頻度が変化(多くの場合では上昇)した。多くの場合では、軟化後に断層すべりが起きた。歪が10%未満の変形初期ではAE震源は比較的ランダムに分散していた一方で、歪が10%を超える変形中後期では、AE震源はクラスターを形成する傾向が見られた。X線マイクロトモグラフィー法で観察した断層とAEの震源分布には、ある程度の相関関係があったものの、そうではないAE震源も多く見られた。同様のことは、ゲルマニウムオリビン多結晶体(Wang et al., 2017)でも報告されており、断層形成及びすべりの結果として発生するAEがある一方で、断層とは無関係に発生するAEも存在するということを意味しているのかもしれない。
そこで本研究では、SPring-8のBL05XUビームラインに小型D-DIA型変形装置及びシンチレーションレスの2次元半導体検出器(WidePix 5x5、Advacam社製)をはじめとした光学系を仮設し、スラブ内浅部の温度圧力条件下(500-900℃、2-3 GPa)におけるカンラン石多結晶体の一軸圧縮試験を行った。MA6-6型加圧方式(2段目アンビル先端7mm)を採用し、試料の一軸圧縮は一定のD-ramストローク速度にて行った。高エネルギーアンジュレーター光源から供給されるピンクビーム(約100keV)を試料に入射し、2次元X線回折パターン及びラジオグラフを交互に撮影することにより(露光時間はいずれも0.4秒)、試料の被る応力及び歪を測定した。2段目アンビルの背面には計6個の圧電素子を貼り付け、それぞれの圧電素子にて試料から放出されるAEを測定した。AE波形(P波)の初動時刻より、AEの震源位置を決定した。回収試料中に発達した断層の空間分布状態は、SPring-8のBL20B2にてX線マイクロトモグラフィー法を用いて観察した。
いずれの条件でも、2GPaを超える差応力にて降伏が起き、その後に“見かけの”定常的な流動とそれに伴うAE発生が継続した。塑性変形がより卓越するであろう、高温側の800-900℃ではより多くのAEが発生した一方で(数百件程度)、低温側のAE発生件数は高温側の半数程度にとどまった。歪が10%を超える領域では、応力一定にて歪速度が1.5-2倍となる軟化が起き、それに合わせてAEの発生頻度が変化(多くの場合では上昇)した。多くの場合では、軟化後に断層すべりが起きた。歪が10%未満の変形初期ではAE震源は比較的ランダムに分散していた一方で、歪が10%を超える変形中後期では、AE震源はクラスターを形成する傾向が見られた。X線マイクロトモグラフィー法で観察した断層とAEの震源分布には、ある程度の相関関係があったものの、そうではないAE震源も多く見られた。同様のことは、ゲルマニウムオリビン多結晶体(Wang et al., 2017)でも報告されており、断層形成及びすべりの結果として発生するAEがある一方で、断層とは無関係に発生するAEも存在するということを意味しているのかもしれない。