2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

S3: Rheology and Material Transfer in Mantle and Crust (Special Session)

Fri. Sep 13, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ES025 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Miki Tasaka(Shizuoka University)

9:30 AM - 9:45 AM

[S3-12] In-situ observation of grain growth and fluid movement using camphor as a rock analogue

*Junichi Fukuda1 (1. Dept. Geos. Osaka Metrop. Univ.)

Keywords:Rock analogue, Camphor, Grain growth, Fluid

地殻やマントルにおいて粒径は変形や反応に寄与する.粒成長は粒径を増加させる重要な機構である.しかし地球内部における実際の粒成長は,構成鉱物集合体を用いた実験からも示唆されている通り,何千年,何万年とかけて有意な変化が見られる現象である(例えば石英集合体についての粒成長実験としてFukuda et al. 2019).粒成長実験では,このような天然での長い時間変化を加速させて行う.そのために,天然条件よりも高温高圧条件下で実験を行うことで,数時間から数日程度で有意な粒成長を得る.このような実験では,高温高圧実験装置を用いて,金属ジャケットに封入した試料と実験ピースを実験毎に装置から取り出し,凍結された試料組織を観察することがほとんどである.したがって,実際の地球内部での粒成長は当然ながら,実験においても刻々と変化する組織を観察することはできない.さらに,地球内部には流体が鉱物粒界や流体包有物として粒内に普遍的に存在する.このような流体は粒成長に伴って移動すると考えられる.
 以上の背景の下,本研究では岩石模擬物質である樟脳を用いて,粒成長その場観察実験と,流体相としてエタノールを加えた同様の実験を行った.実験手順として,乳鉢に数百mgの樟脳のみ,またはそこに数十µlのエタノールを加えてすりつぶした.その後,約5 mgの試料をスライドガラスにセットし,上部から別のスライドガラスを押し付けた.上部のスライドガラスを取り除いた後,試料を偏光顕微鏡下で観察すると,平均粒径10 µmからなる緻密な樟脳集合体が見られた.空隙は1面積%以下であった.エタノールを加えた樟脳試料は,エタノールが数面積%として,樟脳粒界と樟脳粒内に流体包有物として保持されている.このように,樟脳のみの試料と樟脳+エタノール試料のそれぞれを室温かつ偏光顕微鏡下で動画を撮影することで粒成長過程を観察した.
 実験の結果,樟脳のみの試料では,正常粒成長が起きる様子が観察され,2時間程度で平均粒径が10 µmから40 µmへと変化した.この結果はFukuda(2024)で報告した.樟脳+エタノール試料では,樟脳の正常粒成長に加えて,次の3種の流体の挙動が確認された(図).1.近傍の流体同士が合体し,大きな流体となる(図中のCombination).2.元々は樟脳粒界にあった流体が,粒成長による粒界移動に伴って粒子内部に移動し,流体包有物となる(Left behind).3.元々は流体包有物であったが粒界移動により,近傍の粒界に取り込まれる(Incorporation into GB).先の1は当然の結果であろう.2と3の違いは流体包有物の体積とそれを保持できる近傍の粒界の体積に関係があると考えられる.すなわち,1の流体の合体により流体の体積が増加する,または粒成長に伴い一つの粒界の体積増加または減少により,流体の体積>粒界の体積となれば2が起き,流体の体積<粒界の体積であれば3が起きる.
 次に,樟脳+エタノール粒成長実験において,実験開始時と任意の時間後の流体の分布を測定した.その結果,流体同士の合体により,時間の経過と共に個々の流体の平均面積(実際は体積)は増加するが,単位画像面積あたりの流体の数は減少した.しかし,単位画像面積あたりの流体の総面積は実験前後で保持されていた.実際の天然においても,粒成長に伴うこのような流体の挙動が示唆される.

Fukuda J., Raimbourg H., Shimizu I., Neufeld K., Stünitz H. (2019) Experimental grain growth of quartz aggregates under wet conditions and its application to deformation in nature. Solid Earth, Vol. 10, pp. 621–636
Fukuda J. (2024) Grain growth of camphor as a rock analogue: microstructural development and grain growth law. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences. Vol. 119:010
S3-12