12:30 PM - 2:00 PM
[S3-P-01] Preliminary results of deformation experiments on hydrous stishovite using a rotational DAC
Keywords:Rotational diamond anvil cell, High temperature and pressure, Hydrous stishovite, Rheology, Deformation experiment
近年の地震波観測の進展により下部マントルに沈み込んだスラブの形態が明らかになってきた(Fukao and Obayashi, 2013)。スラブの振る舞いは地球史を通して地球内部全体の物質循環とその進化に重要な影響を及ぼしたことが予想される。その中でも放射性熱源を多く含む海洋地殻がどこまで沈み込み、どこで滞留するのかを明らかにすることは、マントルにおける物質循環と熱循環を解明するために必要不可欠な研究項目である。これらを明らかにするためには、海洋地殻を構成する鉱物のレオロジー特性(流動強度、結晶方位選択配向(CPO)、地震波異方性)を実験的に検証することが有効な手段であるが、下部マントルの超高圧、かつ、大ひずみの定量的な変形実験を行うことが技術的に困難であったため、実験的な力学データに乏しかった。本研究では、我々研究グループが独自開発してきた回転式ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)を用いて(Nomura et al., 2017; Azuma et al., 2018, Park et al., 2022; Azuma et al., 2024)、海洋地殻を構成する高圧鉱物、特に含水スティショバイト(Al bearing SiO2)の変形特性を明らかにすることを目的とした変形実験を行った。本発表では、その予察的結果について紹介する。
変形実験に用いた含水スティショバイト(1750±140 ppmH2O)は、愛媛大学GRCのマルチアンビルプレス(ORANGE-3000)によって、SiO2 glass + 7.4 wt% Al(OH)3 (2.6 wt% H2O)粉末から合成された(12 GPa, 1673 K, 1 hour)。合成された試料に対し、SPring-8(BL47XU)において、rDACによる超高圧高温大歪変形実験を行った。rDACのダイヤモンドアンビルにはキュレットサイズ0.3-0.5 mmのものを使用し、アンビル表面には試料との滑りを防ぐための溝を作成した(Azuma et al., 2018)。ガスケットに封入されている試料に対して、対になったダイヤモンドアンビルを押し込むことで高圧にし、新たにrDACへ導入した近赤外線集光加熱(イメージ炉)によって試料は加熱された(Azuma et al., 2024)。温度の測定はガスケットと試料に熱電対を限りなく近づけて測定を行った。試料を封入したrDACをビームライン上に設置し、高温高圧を再現したのち、rDACの上部アンビルを一定速度で回転させることで、ねじり変形を行った。変形実験条件は、下部マントルへと沈み込んだスラブ内の実際の温度圧力に近い条件も含めた圧力10-55 GPa, 温度300-1073 K、一定の歪速度10-4–10-3 /s、歪200 %以上で実施した。変形中の試料に対しては、その場XRD測定を⾏うことで応⼒を決定した。
実験結果として、含水スティショバイトは変形開始直後に応力が上昇し、その後、定常状態へと遷移し、塑性変形していることが確認された。各実験条件の歪―応力曲線からは、含水スティショバイトの強度の圧力依存性、温度依存性が観察された。下部マントルの主要構成鉱物であるブリッジマナイト((Mg,Fe)SiO3)やフェロペリクレース((Mg,Fe)O)の力学データと、今回の実験結果を比較すると、ブリッジマナイト(nominally dry)より強度が低く、フェロペリクレース(nominally dry)より強度が高い、双方の中間的な強度という結果になった。一方で、本研究では非常に多量の水を含んだスティショバイトを用いていることを鑑みると、下部マントルに沈み込んだ地殻のレオロジーにおけるスティショバイトの重要性は、構成鉱物間の水の分配が非常に重要な鍵である可能性を示唆している。
変形実験に用いた含水スティショバイト(1750±140 ppmH2O)は、愛媛大学GRCのマルチアンビルプレス(ORANGE-3000)によって、SiO2 glass + 7.4 wt% Al(OH)3 (2.6 wt% H2O)粉末から合成された(12 GPa, 1673 K, 1 hour)。合成された試料に対し、SPring-8(BL47XU)において、rDACによる超高圧高温大歪変形実験を行った。rDACのダイヤモンドアンビルにはキュレットサイズ0.3-0.5 mmのものを使用し、アンビル表面には試料との滑りを防ぐための溝を作成した(Azuma et al., 2018)。ガスケットに封入されている試料に対して、対になったダイヤモンドアンビルを押し込むことで高圧にし、新たにrDACへ導入した近赤外線集光加熱(イメージ炉)によって試料は加熱された(Azuma et al., 2024)。温度の測定はガスケットと試料に熱電対を限りなく近づけて測定を行った。試料を封入したrDACをビームライン上に設置し、高温高圧を再現したのち、rDACの上部アンビルを一定速度で回転させることで、ねじり変形を行った。変形実験条件は、下部マントルへと沈み込んだスラブ内の実際の温度圧力に近い条件も含めた圧力10-55 GPa, 温度300-1073 K、一定の歪速度10-4–10-3 /s、歪200 %以上で実施した。変形中の試料に対しては、その場XRD測定を⾏うことで応⼒を決定した。
実験結果として、含水スティショバイトは変形開始直後に応力が上昇し、その後、定常状態へと遷移し、塑性変形していることが確認された。各実験条件の歪―応力曲線からは、含水スティショバイトの強度の圧力依存性、温度依存性が観察された。下部マントルの主要構成鉱物であるブリッジマナイト((Mg,Fe)SiO3)やフェロペリクレース((Mg,Fe)O)の力学データと、今回の実験結果を比較すると、ブリッジマナイト(nominally dry)より強度が低く、フェロペリクレース(nominally dry)より強度が高い、双方の中間的な強度という結果になった。一方で、本研究では非常に多量の水を含んだスティショバイトを用いていることを鑑みると、下部マントルに沈み込んだ地殻のレオロジーにおけるスティショバイトの重要性は、構成鉱物間の水の分配が非常に重要な鍵である可能性を示唆している。