第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 歯牙・歯髄・歯周組織1

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:10 E会場 (441講義室(4号館4F))

座長:岡田 裕之(日大松戸歯 組織)

14:40 〜 14:50

[O2-E-PM1-03] Intraflagellar transport protein 88によるHippo経路と古典的WNT経路を介した象牙芽前駆細胞増殖制御の可能性

〇河田 かずみ1、青山 絵理子2、滝川 正春2、久保田 聡1 (1. 岡大 院医歯薬 口腔生化、2. 岡大 院医歯薬 歯先端研セ)

キーワード:象牙芽前駆細胞、IFT88、細胞増殖

Intraflagellar transport protein 88 (IFT88)は、細胞周期停止期には細胞外環境感知センサーである一次繊毛の形成に、また、特にHeLa細胞の増殖期には、G1期からS期へ細胞周期の移行の抑制に機能する。しかし、象牙芽前駆細胞増殖におけるIFT88の機能に関しては研究が進んでいないため、我々は、これについて検討を行った。 レンチウイルスベクターシステムにより、Ift88をノックダウンした、sh-Ift88 MRMT-1細胞(乳がん細胞由来細胞株)とsh-Ift88 KN-3細胞(象牙芽前駆細胞株)を作製した。細胞増殖速度は、sh-Ift88 MRMT-1細胞では、現在までの報告通り促進されたが、sh-Ift88 KN-3細胞では抑制された。そこで、細胞増殖制御機構のひとつであるHippo経路の転写共役因子であるYes-associated protein (YAP)の核内移行を検討した。その結果、YAPの核内移行量は、sh-Ift88 MRMT-1細胞において増加したが、sh-Ift88 KN-3細胞では増加と減少の二極性を示した。YAPの標的遺伝子の発現レベルは、sh-Ift88 MRMT-1細胞ではYAPの核内移行量と一致して増加した。一方、sh-Ift88 KN-3細胞においては減少しており、YAPによる転写活性化が抑制されている可能性が示唆された。さらに、Hippo経路とクロストークする古典的WNT経路の転写調節因子であるβ-cateninの核内移行を検討した。その結果、β-catenin核内移行量は、sh-Ift88 MRMT-1細胞においては増加し、sh-Ift88 KN-3細胞では減少した。 以上より、KN-3細胞におけるIFT88の細胞増殖制御機構には、現在までの報告と異なる細胞種特異的なメカニズムが存在することが考えられる。