第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 歯牙・歯髄・歯周組織2

2023年9月17日(日) 15:20 〜 16:00 E会場 (441講義室(4号館4F))

座長:瀬田 祐司(九歯大 解剖)

15:20 〜 15:30

[O2-E-PM2-01] 歯の移動初期における歯根膜組織全貌の大規模三次元イメージング

〇髙橋 春香1、橋本 真奈2、上岡 寛2 (1. 岡大 院医歯薬 矯正、2. 岡大 学術院 矯正)

キーワード:歯根膜、FIB-SEM、メカニカルストレス

【緒言】矯正歯科治療において歯に加えられた矯正力は歯根膜を介し歯槽骨改造を誘導する。歯根膜は線維束や細胞群から構成され、矯正的歯の移動初期には力が加えられる圧迫側において圧縮変形することがわかっている。しかし、歯根膜は歯―骨間に介在する広範囲な組織であるため、圧迫側における形態変化の全貌は明らかでない。本研究では、XeプラズマFIB-SEMを用いてナノサイズの高い解像度で数百μmの大きな範囲の三次元画像を取得し、圧迫側の歯根膜組織の形態学的解明を試みた。【方法】8週齢のICRマウスの切歯と上顎左側第一大臼歯にニッケルチタンコイルスプリングを結紮し、24時間矯正力を付与した。灌流固定後に電子染色し、圧迫側となる第一大臼歯口蓋根における近心側の歯周組織をXeプラズマFIB-SEMを用いて観察した。得られた連続画像を3D画像処理ソフトウェアで形態計測を行い、非移動組織との比較を行った。【結果および考察】XeプラズマFIB-SEMを用いて、解像度を50 nm/pixelに設定し圧迫側歯周組織における205×179×82 μmの領域を1642枚撮影した。非移動組織は208×238×105 μmの領域を2100枚撮影し、連続SEM像を取得することに成功した。さらに機械学習、深層学習を応用した歯根、歯槽骨、血管、歯根膜線維束、細胞群の自動抽出を行い、形態計測を行なった。歯根膜線維束は歯―骨間を規則性を持って走行しながら吻合と分岐を繰り返し、その周囲は歯根膜細胞と細胞突起に包み込まれていた。線維束一本当たりの直径、表面積は歯槽骨壁に近づくに従って有意に増加した。部位別(歯根側、中央部、歯槽骨側)に圧迫側と非移動組織を比較すると、圧迫側歯根膜線維の歯槽骨側では有意に変形率が増加した。このことから歯の移動初期において圧迫側の歯根膜線維束は歯槽骨側で活発に圧縮変形されることが示唆された。