第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 骨2

2023年9月18日(月) 09:40 〜 10:50 E会場 (441講義室(4号館4F))

座長:津田 啓方(日大 歯 生化)

10:20 〜 10:30

[O3-E-AM2-05] 活性型ビタミンDの骨吸収促進作用による軟組織の石灰化に、副甲状腺ホルモンは関与せず、骨芽細胞内のビタミンD受容体が決定的な役割を果たす

〇中道 裕子1,2、劉 子洋2、何 治鋒1、高橋 直之1,2、宇田川 信之1,2,3 (1. 松歯大 総歯研、2. 松歯大 歯学独立研、3. 松歯大 生化)

キーワード:骨芽細胞、ビタミンD受容体、軟組織石灰化

ビタミンD受容体(VDR)は、骨では主に骨芽細胞と骨細胞(以後、骨芽細胞に統一)により発現され、副甲状腺ホルモン(PTH)と協調して骨吸収とカルシウム(Ca)の恒常性を調節する。近生理量のビタミンD化合物は、骨芽細胞内のVDRを介して骨吸収を抑制し(JBMR 2017)、一方、高用量の活性型ビタミンD[1,25(OH)2D3]は、骨芽細胞内のVDRを介して骨吸収と高Ca血症を誘導する(Endocrinology 2020)ことを報告した。今回は、後者の骨吸収促進量の1,25(OH)2D3が、骨芽細胞内のVDRを介して軟組織石灰化を引き起こすことを報告する。高濃度ビタミンDは多臓器の機能に影響し、軟組織石灰化、骨吸収亢進および血清Ca値上昇を引き起こす。この複合的症状は高ビタミンD症と呼ばれ、ビタミンD大量摂取ばかりか、1,25(OH)2D3の異所的産生を伴う疾患においても認められる。高ビタミンD症への骨吸収の寄与を明らかにするために、抗破骨細胞分化因子(RANKL)中和抗体で骨吸収を抑制した野生型マウスに、骨吸収促進量の1,25(OH)2D3を投与した。1,25(OH)2D3は大動脈、肺、腎臓の石灰化を誘導した。野生型マウスへの抗RANKL抗体投与は、1,25(OH)2D3によるPTH分泌抑制には影響しなかったが、1,25(OH)2D3による軟組織石灰化を抑制した。抗RANKL抗体の効果と同様に、骨芽細胞内VDRの欠損は、1,25(OH)2D3によるPTH分泌抑制に影響しなかったが、1,25(OH)2D3による軟組織石灰化を抑制した。骨芽細胞内のVDRシグナル過剰により誘導される骨吸収は、高ビタミンD症発症に重要であるが、PTH分泌調節は高ビタミンD症発症に関係ないことが示唆された。骨吸収阻害薬の使用は、高ビタミンD症と血管石灰化を有する患者の治療オプションになるかもしれない。