[P1-2-06] 骨に局在するTGF-βが骨カップリング因子に及ぼす影響
キーワード:骨吸収、骨カップリング、TGF-β
正常な骨量を保つためには、破骨細胞によるカップリング機構が作動しなければならない。この機構を調節する因子は、骨吸収によって産生または活性化され、骨形成を促進するような働きをする因子であると考えられている。近年、骨吸収によって放出された骨基質中のトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)が骨芽細胞前駆細胞に作用し、骨形成を促進することが報告されているが、破骨細胞自身への影響はまだ明らかにされていない。【目的】我々は骨吸収によって放出されたTGF-βが破骨細胞自身に与える影響を調べることを目的とした。【材料・方法】Latent TGF-β(LTGF-β)を共有結合させたCa-Pコーティングプレートを用いて、マクロファージ系のRAW264細胞を可溶性RANKLとともに培養し、破骨細胞へと分化させ、①Pit assayによる骨吸収活性の測定、②蛍光免疫染色による吸収窩内のTGF-βの観察、③RT-qPCRによる遺伝子発現解析、④細胞を各種染色(HE、Von Kossa、TRAP、IF)し、観察および定量的解析を行った。【結果・考察】Pit assayでは、LTGF-β含有のプレートは対照群と比較し、骨吸収の割合に有意差が見られた。蛍光免疫染色では、吸収窩内のTGF-βが骨吸収によって減少していることが確認された。RT-qPCRにおいて、TGF-β存在下では対照群と比較し、破骨細胞分化・骨吸収・骨芽細胞活性化に関与する遺伝子の発現が増加していた。組織学的実験において、TGF-β存在下では対照群と比較し、TRAP活性の上昇が見られ、骨吸収・骨芽細胞活性化に関与するタンパクも上昇していた。以上の結果より、骨吸収によって放出されたTGF-βは、破骨細胞自身および破骨細胞前駆細胞を活性化させ、骨吸収を促進し、骨芽細胞への活性化にも関与していることが示唆された。