[P1-2-09] エナメル芽細胞のトランスポーター発現に対するTGF-βの影響について
キーワード:TGF-β、エナメル質、トランスポーター
エナメル質形成において、エナメル芽細胞に局在するトランスポーターはミネラルイオンや重炭酸塩をエナメル質に排泄して結晶成長を持続させるための重要な役割を担っているが、その発現機構については不明である。一方、エナメル質中に存在するトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)は、オートクリン機構によりエナメル質形成に関与すると考えられている。【目的】今回我々は各種トランスポーターの発現に及ぼすTGF-βアイソフォームの影響を調べることを目的とした。【材料および方法】10%FBS含有DMEM/F-12培地で培養したマウスエナメル上皮細胞(mHAT9d)にリコンビナントTGF-β1、β2およびβ3を添加(1 ng/mL、5 ng/mL)し10日間培養を行なった。培養後の細胞からRNAを抽出し、定量PCRによって各種トランスポーターおよび関連酵素の遺伝子発現量を解析した。【結果および考察】Anion Exchanger 2 (Slc4a2)およびクエン酸トランスポーター (Slc25a1)の遺伝子発現量はいずれのTGF-βアイソフォーム添加で変化が見られなかったが、ナトリウム-重炭酸イオン共輸送体 (Slc4a7)や炭酸脱水酵素2および6 (Car2およびCar6)ではTGF-β2の1 ng/ml添加群以外で遺伝子発現量の増加が見られた。以上より、TGF-βはある種のトランスポーター及び炭酸脱水酵素の遺伝子発現に関与し、アイソフォーム間でその作用に違いが生じていることが判明した。このことは、アパタイト結晶が形成される際にエナメル質内に放出されるプロトンの緩衝機構にTGF-βが一助を担っているということを示唆している。現在、その他のトランスポーターの発現についても解析中である。