[P1-2-11] ヒト歯髄幹細胞におけるEr:YAGレーザー照射による影響
キーワード:歯髄細胞、レーザー、ALP活性
歯科領域では種々のレーザーが使用されているが、作用機序や効果については不明な点が多い。演者らは先行研究において、ブタ歯髄細胞へのEr:YAGレーザーおよび半導体レーザー照射が、異なる作用機序で硬組織形成細胞への分化、細胞増殖能の変化、アポトーシス誘導へ影響を及ぼすことを確認した。【目的】本研究では、Er:YAGレーザー照射によるヒト歯髄幹細胞(hDPSC:Human Dental Pulp Stem Cells)の細胞増殖能、アポトーシス誘導および硬組織形成細胞への分化に対する影響について調べることを目的とした。【材料および方法】hDPSC播種1日後にレーザー照射し、MTSアッセイによる細胞増殖の測定、カスパーゼ3抗体を用いた免疫染色によるアポトーシスの観察、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)添加によるアルカリホスファターゼ (ALP)活性の影響について未照射群と比較した。【結果】細胞増殖能は、レーザー照射群では、照射後1日目で減少するものの、3,4日目で未照射群と比較して僅かに上昇した。アポトーシス誘導への影響では、レーザー照射群では照射後1,3日目にカスパーゼ3陽性細胞が僅かに認められた。ALP活性は、7日目にレーザー照射群が未照射群と比べ有意に上昇した。【考察】レーザー未照射群に対して、照射群では、照射直後の細胞数減少、培養細胞のアポトーシス誘導が観察されたが、これは同レーザーが表面吸収型であることが影響していると推察される。また、レーザー照射群ではALP活性が未照射群に対して有意に上昇したことから、レーザー照射が細胞表面のTGF-β受容体に何らかの影響を及ぼしたことが示唆された。今後さらに分化の方向性についての遺伝子解析、石灰化誘導能、TGF-βに対する細胞の応答性について調べる予定である。