[P1-3-11] Gli1陽性歯髄細胞は歯髄傷害後に象牙芽細胞へ分化する
キーワード:歯・歯髄、再生、多能性幹細胞
【目的】歯髄に多分化能を有する幹細胞が存在することが知られているが、その局在ならびに機能は不明な点が多い。Shhシグナルの下流因子であるGli1は歯の発生過程において幹細胞特性を示すことが知られている。そこで本研究では歯髄修復時におけるGli1陽性細胞の機能を検討する目的で、窩洞形成後のGli1陽性歯髄細胞の動態を細胞系譜解析法で検討した。【方法】4週齢Gli1-CreERT2/ROSA26-loxP-stop-loxP-tdTomato(iGli1/Tomato)マウスにタモキシフェンを2日間投与し、0および28日後にGli1/Tomato陽性細胞の局在を観察した。また、上顎第一臼歯に象牙質窩洞を形成し、3、14日後にGli1/Tomato、Runx2、象牙質シアロタンパク(DSP)、Ⅰ型コラーゲンの局在を検討した。【結果及び考察】4週齢マウス歯髄において少数のGli1/Tomato陽性細胞が認められた。この陽性細胞の数は28日後の歯髄においてもほとんど変化はなく、増殖を認めなかった。窩洞形成後3日の歯髄では、窩洞直下の細胞に変性が認められた。Gli1/Tomato蛍光は冠部歯髄では消失したが、根部歯髄の血管周囲に多数のGli1/Tomato陽性細胞が観察された。14日後になると、既存の象牙質に接して修復象牙質形成が認められた。修復象牙質表面に配列する象牙芽細胞はGli1/TomatoならびにRunx2陽性であり、修復象牙質基質はDSPの陽性反応を示した。また、Gli1/Tomato陽性細胞は修復象牙質近傍の歯髄中に多数認められ、Ⅰ型コラーゲン陽性を示した。以上の結果より、歯髄に存在するGli1陽性細胞は窩洞形成後に象牙芽細胞ならびに歯髄線維芽細胞へ分化することが明らかになった。従って、Gli1陽性歯髄細胞は歯髄修復に関わる細胞の供給源として機能することが示された。