第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-43] グレリンは島皮質から延髄孤束核の抑制性ニューロンに対するシナプス応答を減弱する

〇若林 杏美1,2、中谷 有香1、堤 友美3、小林 真之1 (1. 日大 歯 薬理、2. 日大 歯 小児歯、3. 阪大 院歯 系統・神経解剖)

キーワード:島皮質、孤束核、グレリン

味情報は,鼓索神経,舌咽神経,迷走神経を介して延髄孤束核(NTS)に伝達される。口腔顔面領域における痛みや味覚情報を統合処理することで知られる島皮質からNTSへは,下行性投射線維が存在し,恒常的な摂食行動調節に関与することが報告されている。しかし,NTSには抑制性ニューロンと興奮性ニューロンが存在し,島皮質からの投射がどちらのニューロンとシナプス形成しているかは不明である。また,摂食亢進作用を持つペプチドホルモンのグレリンがこのシナプス応答を増強するか減弱するかについても不明である。そこで我々は,NTSにおけるニューロンを興奮性か抑制性か同定した上で,光遺伝学的手法を用いて島皮質→NTSへのシナプス伝達様式とグレリンの作用について解析した。GABAトランスポーターを緑色蛍光タンパクVenusで標識した遺伝子改変ラットの島皮質にアデノ随伴ウイルスをベクターとして,蛍光タンパクであるチャネルロドプシン2を発現させた。4-5週飼育後,NTSを含む急性脳スライスを作製し,ホールセル・パッチクランプ法にて電気生理学的に記録を行った。NTSにおける抑制性ニューロンと興奮性ニューロンから光刺激により誘発される興奮性シナプス後電流(pEPSC)を記録し,テトロドトキシンを潅流投与したところpEPSCは消失し,さらに4-アミノピリジンを投与すると再度pEPSCが回復した。したがって,島皮質ニューロンはNTSの興奮性ニューロンだけでなく抑制性ニューロンに対しても直接シナプス形成していることが明らかになった。さらに,抑制性ニューロンにおいてpEPSCを確認後,グレリン100 nMを灌流投与すると振幅が有意に減弱した。以上の結果より,グレリンは島皮質からNTSにおける抑制性ニューロンへのシナプス応答を抑制し,上行する味覚情報を増強している可能性が示唆された。