第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P2-2-15] 間質オルガノイド環境での口腔癌スフェロイドの表現型・形態解析

〇工藤 朝雄1、埴 太宥1、佐藤 かおり1、田谷 雄二1、添野 雄一1 (1. 日歯大 生命歯 病理)

キーワード:口腔癌スフェロイド、間質オルガノイド、口腔癌細胞株

【背景と目的】口腔癌は周囲組織への強い浸潤性増殖を示すが、癌細胞によって筋・神経・顎骨などへの浸潤性は異なっている。本研究では、細胞外基質(ECM)との相互作用が口腔癌細胞の発現形質にどのような影響を与えるかを明らかにするため、スフェロイド培養、オルガノイド培養モデルを用いて口腔癌細胞の形態解析/免疫表現型解析を行った。
【方法】低接着性培養プレートを用いて性質の異なるヒト口腔癌細胞株[中分化型のHSC2、KOSC2、低分化型でin vivoでの脈管誘導能が高いOSC-19、EMT様形質を示すOSC-20]のスフェロイドを作製した。また、各スフェロイドをヒト歯肉由来線維芽細胞と共にハイドロゲルに埋入してオルガノイドを作製、3~7日間の培養期間における癌細胞の形態・発現形質の変化を組織学的・免疫組織化学的に観察した。
【結果と考察】いずれの癌細胞株も、スフェロイドにおいては高い増殖活性(Ki-67陽性)を示す細胞が散在していた。同様に接着分子E-cadherin、CD44vsの発現も確認できたが、中分化型のHSC-2、KOSC-2と比較して、低分化型のOSC-19、OSC-20での発現は弱かった。各癌細胞株のスフェロイドをオルガノイド培養にて観察すると、HSC-2、KOSC-2は分化傾向を示し、Ki-67陽性核の分布様式から上皮組織様の極性形成が確認できた。OSC-19、OSC-20では、増殖活性が維持され明確な極性は見出せなかったが、ECMとの接触により細胞接着因子の発現が増強され、HSC-2、KOSC-2と比べて仮足形成などの浸潤傾向を示す所見が認められた。スフェロイド・オルガノイドの比較結果から、癌細胞-ECM相互作用によって生じる癌細胞形質の変化が細胞極性の形成や浸潤・転移能にも影響を与えていると考えられた。本研究はJSPS科研費#21K10053の助成を受けた。