第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-19] 上皮性縫合の形成は口蓋突起内側縁上皮細胞の間葉細胞への形質転換を促進し、TGFβ3 欠損マウスにおける形質転換の起こりやすさはマウスの系統に依存する

〇杉山 明子1、滝川 俊也1 (1. 朝日大 歯 組織)

キーワード:口蓋突起内側縁上皮、上皮-間葉形質転換、TGFβ3 欠損マウス

[目的, 方法と材料]
口蓋突起の癒合における上皮性縫合形成の精緻な役割はいまだ解明されていない。我々はC57BL/6JとICRマウスの野生型(WT)とTGFβ3 欠損(KO)マウスを用いた培養実験で、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤 GM6001(10μM)を培地に添加して上皮性縫合を形成させたままで基底膜の分解を阻害して、上皮性縫合の形成が口蓋突起内側縁上皮(MEE)細胞の最終分化に与える影響を組織学的に解析した。
[結 果]
WTでは2系統とも上皮性縫合を形成し、分解されないままの左右側の基底膜の間に上皮-間葉分化転換(EMT)を起こして生き残るMEE細胞(ケラチン陰性、ビメンチン陽性、TUNEL陰性)が観察された。TGFβ3 欠損(KO)マウスでも2系統とも上皮性縫合を形成したが、ICR系統ではEMTを起こして生き残るMEE細胞が部位特異的にみられ、その存在部位はICR TGFβ3 KO マウスが呈する不完全口蓋裂で部分的に口蓋突起が癒合する部位にほぼ一致していた。一方、C57BL/6J系統ではEMTを起こすMEE細胞はほとんど認められなかった。
[考察と結論]
今回の研究結果から、不完全口蓋裂を呈するICR TGFβ3 KO マウスでは癒合する部位のMEE細胞はEMTを起こす能力を有する一方、完全口蓋裂のみを呈するC57BL/6J TGFβ3 KO マウスではMMP活性を阻害することによりMEE細胞は上皮性縫合を形成することはできるが、EMTを起こす能力は欠如していることが明らかとなった。したがって、口蓋突起の癒合にはMEE細胞がEMTを起こす能力が重要であり、正常な口蓋突起の癒合時に起こるMEE細胞のアポトーシスの多くはEMTを起こすMEE細胞が周囲の細胞外マトリックス分解により足場を失って引き起こされるアノイーキスである可能性が強く示唆された。