第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-21] S100a6によるエナメル芽細胞の増殖と分化への影響

〇大竹 慎司1、齋藤 幹2、千葉 雄太1、山田 亜矢1、福本 敏1,3 (1. 東北大 院歯 小児歯、2. 東北大病院 小児歯、3. 九大 院歯 小児口腔)

キーワード:歯の発生、歯原性上皮細胞、エナメル芽細胞

エナメル質はエナメル芽細胞から分泌される細胞外マトリックスを足場にカルシウム(Ca)やリンなどが沈着して石灰化する.骨芽細胞では細胞内Caを細胞外へ放出することで石灰化が誘導されるが,エナメル芽細胞での報告は少ない.我々は以前に歯の石灰化期にCaと結合するS100a6の発現がエナメル芽細胞で発現することを見出した.そこでエナメル芽細胞におけるS100a6とCaの関係について検討を行った. in vivoではマウス歯胚,in vitroではラット歯原性上皮 (SF2) 細胞株,エナメル芽細胞へ分化誘導したSF2細胞(dSF2),培地Ca濃度を増加させたSF2細胞(CaSF2)に対してS100a6の免疫染色を行い,発現部位を特定した.また,各細胞に対してS100a6を発現抑制し,エナメル芽細胞マーカーの発現およびS100a6の機能解析を行った. マウス歯胚ではエナメル芽細胞の分化とともに発現が増加し,基質分泌期ではエナメル質形成側に限局して発現していた.SF2細胞株ではs100a6は細胞質内に局在したが,dSF2,CaSF2では細胞膜付近に移行した.そこでs100a6の発現を抑制したSF2細胞株のマイクロアレイ解析を行ったところ,細胞増殖が抑制されている可能性が示唆された.更に,各細胞における細胞増殖を測定したところ,SF2細胞株と比較して,dSF2,CaSF2は増殖抑制を認め,S100a6発現抑制すると更に細胞増殖は抑制された. S100a6はCa結合し,Caの恒常性を維持している.今回の結果では,エナメル質形成側で発現しており,高分化エナメル芽細胞や細胞外Ca濃度上昇させた細胞の細胞膜に局在していたことから,細胞膜でCaと結合し,石灰化に関与している可能性が示唆された.また,S100a6の抑制は細胞の増殖を抑制したことから,細胞増殖にも影響を与えている可能性が示唆された.