[P3-2-19] 老化歯肉におけるカプサイシンのβ-defensin誘導能
—老齢マウスと老化歯周細胞培養系における解析—
キーワード:根面う蝕、カプサイシン、defensin
根面う蝕は高齢者に特有のう蝕であり、要介護者の多発性根面う蝕が在宅医療や介護現場で問題になっている。発症の場がセメント質であり進行が早いこと、二次う蝕を発症しやすいこと、歯肉縁下に存在するため歯磨きが困難なケースがあることから、予防と処置が最も難しい部類のう蝕である。この様な背景から、根面う蝕の効果的な予防法の開発は超高齢社会において喫緊の課題である。唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは口腔細菌に対する強力な殺菌作用がある(第23回日本抗加齢医学会総会で発表)ほか、歯槽骨の吸収抑制作用がある(Takahashi et al., Sci Rep, 2016)。本研究では、カプサイシンが抗菌ペプチドβ-defensinを誘導することを老齢マウスモデルおよびヒト歯肉上皮および歯肉線維芽細胞培養系で明らかにした。18月齢C57BL/6Nオスマウスをコントロール餌摂取群(C群)と0.01%カプサイシン含有餌を摂取させた群(CAP群)に分け、3ヶ月間飼育した。その後、歯肉組織におけるβ-defensin1, 2のmRNA発現をリアルタイムPCRで検討した。ついで、75uM過酸化水素を添加し老化誘導したヒト歯肉線維芽細胞およびヒト歯肉上皮細胞培養系に各種濃度(6.25uM~200uM)のカプサイシンを添加した後トータルRNAを回収し、β-defensin1, 2のmRNA発現をリアルタイムPCRで、上清中の同タンパク質濃度をELISAでそれぞれ解析した。C群に比べCAP群の歯肉においてβ-defensin1, 2 mRNAの発現が有意に増加していた。また、老化歯肉線維芽細胞および上皮細胞培養系において、6.25uMのカプサイシン添加でβ-defensin1, 2のmRNA発現が有意に増加した。以上の結果から、カプサイシンが老化歯肉においてβ-defensinを誘導することが示唆された。