[P3-3-19] マウス舌の形態形成を制御する分子機構
キーワード:舌形態、発生、分子制御機構
【目的】舌形態形成は最初に下顎突起背側に外側舌隆起を生じ、舌筋細胞の分化とともに舌形状に変化していく。本研究では、舌形態形成に働くシグナル分子に着目し、その分子制御機構について検討した。【材料と方法】ICRマウス胎仔(胎生9.0~18.5日)から、舌原基を含む連続切片を作製し、特異抗体を用いた免疫組織化学による解析を行った。舌形態形成に関わるシグナル分子の探索では舌原基の顕微切断試料でのリアルタイムPCRによる遺伝子発現の解析を行うとともに、シグナル分子のノックダウンや遺伝子欠損モデルによる解析を併用した。【結果】舌形態形成は胎生11.5日で非筋系譜間葉の細胞増殖によって外側舌隆起が形成、胎生12.5日になると辺縁部で上皮陥入が生じ、胎生13.5日以降、舌筋細胞の増殖と配列によって舌形状へと移行した。シグナル分子の探索では、外側舌隆起の形成時期でShh, Patched1, Igf1, Bmp4の発現が上昇し、Endothelin-1(ET-1)シグナルは上皮で発現するShh, Bmp4, Fgf8などの上流分子を示唆する結果が得られた。ET-1欠損マウスでは100%小舌症を発症するが、これは下顎突起正中部の上皮(ET-1発現)と筋前駆細胞が接触できないため、非筋系譜の間葉細胞集団が増殖活性を失い外側舌隆起の形成抑制を受けたことが原因と考えられた。下顎突起の器官培養系でのShh阻害剤jervineによるノックダウンでは外側舌隆起の非筋系譜の間葉細胞でのみ有意に増殖活性が低下したことから、Shhは非筋系譜間葉の細胞増殖を制御し舌原基の形態形成に寄与していることが判明した。【結論】舌形態形成では被覆上皮と舌筋および非筋系譜間葉の細胞間相互作用で働く分子制御機構が示された。本研究は科研費(#21K09822)の援助で行われた。【会員外共同研究者】日本歯科大学生命歯学部 豊田健介。