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[US3-04] 口腔から得られる検体のDNAメチル化を指標とした年齢推定にむけて
キーワード:法歯学、年齢推定、メチル化
エピジェネティックな変化は、遺伝的要因と環境要因の両方の影響を反映していると考えられ、人種間でも異なることが示されている。従来は癌や肥満などの疾患について注目されていたDNAメチル化であるが、近年、年齢推定にも用いることが可能との報告がされ、より安定したCpG領域のシトシンのメチル化が組織特異的な年齢のマーカーとして知られるようになった。実際、血液や唾液を対象としたDNAメチル化に基づいた年齢推定について報告されつつある。また従来、形態学的年齢推定法で重要視されていた歯についても、DNAメチル化が年齢推定に有用であるとの報告がなされている。DNAメチル化は微量の検体を元に部位を限定してリアルタイムPCR等の結果からの検証も可能である。歯髄DNAや歯根表層のセメント質DNAからの年齢推定が確立されれば、これまで検証に際して切り出しや粉砕により大きく損なわれていた歯の概形が維持可能となり、遺族感情への配慮や人類学分野の資料保存の面においても意義が大きいと考えられる。その一方で、年齢推定や年代推定に関連したDNAメチル化の人種間の差異については検証がほとんどなされていなかった。 我々は、歯周組織由来の培養細胞株および多様なアジア系の人々の唾液・歯牙検体を用いて、DNAメチル化と年齢との関連について検証を行っている。本シンポジウムでは、アジア人の唾液メチル化スコアの比較や検体の保管条件による影響を中心に口腔から得られる検体のDNAメチル化を指標とした年齢推定に関するこれまでの研究を紹介する。